健康食品広告の課徴金は、対象商品の売上額に3%を乗じて算定します。課徴金とは、景品表示法第8条に基づき、優良誤認や有利誤認の広告で得た売上の一部を国が徴収する金銭的な不利益処分のことです。基準は広告費でも利益でもなく、問題の表示をしていた期間の対象売上です。課徴金額が150万円未満なら不賦課で、対象売上おおむね5,000万円が一つの境目になります。対象期間は行為をやめた日から遡って最大3年間です。2024年施行の改正では、繰り返し違反への割増や返金による減額も整理されました(2026年9月時点)。自社の売上を当てはめれば、リスク金額はその場で概算できます。

健康食品広告の課徴金はいくら?計算式は売上×3%

健康食品広告の課徴金は、不当景品類及び不当表示防止法第8条に基づき、課徴金対象期間の売上額に100分の3を乗じて算定します(2026年9月時点)。対象は優良誤認表示(同法第5条第1号)と有利誤認表示(同法第5条第2号)で、基準は利益や広告費ではなく売上額です。

課徴金の計算式と3%の根拠

課徴金額は次の1つの式で決まります。

  • 課徴金額 = 課徴金対象期間の売上額 × 3%

3%という率は、不当景品類及び不当表示防止法第8条第1項が定める法定の乗率です(2026年9月時点)。事業者側で率を交渉して下げる仕組みはありません。売上額が確定すれば、課徴金の概算は掛け算1回で出ます。

対象となる表示は2種類に限られます。

  • 優良誤認表示:品質や効果を実際より著しく優良と見せる表示(第5条第1号)
  • 有利誤認表示:価格や取引条件を著しく有利と見せる表示(第5条第2号)

一般消費者向けの表示が前提です。事業者間取引だけの表示は対象になりません。

「売上額」に含まれるもの・含まれないもの

売上額とは、課徴金対象期間に引き渡した商品の対価の合計額のことです。健康食品の販売代金がこれにあたり、広告費や粗利益は計算に入りません。

基準の取り違えは試算そのものを狂わせます。売上額と間違えやすい項目を整理します。

課徴金の基準になるもの基準にならないもの
対象期間に引き渡した商品の対価の合計広告費・販促費
定期購入の各回の販売代金粗利益・営業利益
送料込み価格のうち商品対価分在庫評価額・仕入原価

「利益が少ないから課徴金も小さい」という見立ては誤りです。原価率が高く利益が薄い健康食品でも、売上額が大きければ課徴金は膨らみます。社内で試算する際は、経理の売上計上額を対象期間で切り出して積み上げるのが出発点です。

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課徴金がかからない・減る境目はどこ?

課徴金が命じられない境目は「課徴金額150万円未満」です。景品表示法第8条第1項但書により、算定額が150万円に満たない場合は納付命令を行いません(2026年9月時点)。売上額に直すと、対象期間の売上が約5,000万円未満が不賦課の目安です。

課徴金が命じられない2つのライン

賦課対象から外れるかは、次の2点で見ます。

  • 課徴金額が150万円未満:売上×3%が150万円を下回る場合。対象期間の売上が約5,000万円未満が目安(景品表示法第8条第1項但書、2026年9月時点)
  • 対象期間が短い:課徴金の対象期間は、対象行為をやめた日から最大3年間。表示をやめた時期が古いほど、算定対象の売上は縮む

「相当の注意を怠った者でないと認められるとき」も不賦課ですが、健康食品広告で認められる例は限られます。

自主申告と返金措置で減額される条件

減額ルートは自主申告と返金措置の2つです。

  • 自主申告:消費者庁の調査開始前に、代表権のある役員が消費者庁長官へ違反を報告すれば、課徴金は2分の1に減額(景品表示法第9条)
  • 返金措置:対象商品の購入者へ返金を実施すれば、返金相当額を課徴金から控除(景品表示法第10条)

減額を検討する前に、賦課対象かどうかの見極めと処分段階の理解が先に立ちます。措置命令と課徴金の分かれ目を押さえると、自社のリスク金額の当たりが付きます。

実際の売上でいくらになる?課徴金の試算シミュレーション

対象売上の3%が課徴金の原則額です。仮に対象売上1億円なら約300万円、3億円なら約900万円になります。過去10年内に課徴金納付命令を受けていた事業者は、算定率が景品表示法(2026年9月時点)で4.5%へ割り増され、金額が1.5倍に上がります。

売上別の課徴金の目安(3%と割増4.5%)

想定した対象売上ごとに、原則3%と割増4.5%を並べます。いずれも仮定の売上額による試算です。

対象売上(仮定)課徴金3%割増4.5%
5,000万円150万円225万円
1億円300万円450万円
3億円900万円1,350万円
5億円1,500万円2,250万円

対象売上5,000万円のケースでは、割増が適用されると差額が75万円生じます。売上規模が大きいほど、3%と4.5%の金額差は開きます。ダイエット系サプリでの具体的な処分金額の事例も、この算定構造で計算されています。

試算はあくまで概算という前提

上の金額はモデル計算です。実際の課徴金は、次の要素で変動します。

  • 対象期間:課徴金対象行為をした期間に、やめてから最長6か月を加えて認定される
  • 対象売上:その期間に対象商品を販売して得た売上額で算定される
  • 算定率:原則3%、過去10年内に命令歴があると4.5%
  • 不賦課:算定額が150万円未満なら課徴金は命じられない

対象期間の始期と終期、どの売上を含めるかは、消費者庁の認定で決まります。自社の月商・年商を上の表に当てはめる場合も、まず対象期間を何か月と置くかで金額が動きます。社内試算では、想定期間を複数パターンで置いて幅を出すと、リスク金額の上限と下限を把握できます。

どんな表現が健康食品で課徴金の対象になる?

課徴金の対象になりやすいのは、痩身効果を数値で断定する表現と、根拠のないNo.1・最上級表示です。自社DB(景表法×健康食品、2010年4月1日〜2026年6月29日の43件、2026年9月時点)でも優良誤認(効果・性能)が39件、No.1・最上級表示が9件と上位を占めます。

優良誤認と判断されやすい表現の型

不当景品類及び景品表示法第5条第1号の優良誤認は、掲げた効果の裏付けが問われます。不実証広告規制(同法第7条第2項)では、根拠資料の提出を求められてから15日以内に合理的な資料を出せないと、優良誤認とみなされます。

差し戻しで多いのは、次の3型です。

  • 期間や体重を数値で断定する(「◯週間で◯kg」)
  • 使用前後の変化を効果として保証する
  • 客観的な根拠なくNo.1・最上級をうたう
NG表現OK言い換え
3週間で必ず痩せる食事管理と併用した際の一例です
ダイエットサプリNo.1客観的調査の出典と時点を明記する

課徴金事案で認定されたNG表現例

2025年6月30日の課徴金納付命令では、『3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた方法がすごい!』『30〜60代女性が選ぶダイエットサプリ No.1』が認定されました。数値による効果断定とNo.1表示が重なる点が、両表現の共通点です。同種の表現は実際に処分された広告の実例でも確認できます。

措置命令だけで済む場合と課徴金まで進む場合の違いは?

措置命令は表示の是正を命じる処分、課徴金納付命令は売上に応じた金銭の納付を命じる処分です。課徴金は措置命令とは別枠で科され、優良誤認・有利誤認だけが対象になります。

措置命令と課徴金納付命令の位置づけ

措置命令は景品表示法第7条、課徴金納付命令は景品表示法第8条に基づきます(2026年9月時点)。自社DB43件の処分内訳は次のとおりです。

  • 措置命令:20件
  • 課徴金納付命令:11件
  • 行政指導・改善指導:5件

課徴金が命じられた11件は、いずれも措置命令と同じ優良誤認の枠内にあります。措置命令が課徴金の前提になり、金銭の納付まで進むかは別の判断です。

処分根拠内容
措置命令第7条表示の差止め・再発防止
課徴金納付命令第8条対象売上×3%の納付

課徴金まで進みやすいケースの特徴

課徴金は優良誤認・有利誤認の表示が対象です。医薬品的な効能効果など他法令違反の表示は、景品表示法上の課徴金の対象外になり得ます。

  • 効果・性能を裏付けなく強調した優良誤認
  • 対象期間の売上が大きく、課徴金額が150万円以上に達する
  • 行政指導・改善指導(2026-03-23、2025-08-28)で済まず命令へ進む

処分の重さは行政指導・改善指導と命令で大きく異なります。段階ごとの線引きは措置命令と課徴金の分かれ目で確認してください。

2024年施行の改正で課徴金はどう変わった?

改正の柱は2つです。過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への割増(実質4.5%)と、事業者が資料を出さないときに消費者庁が売上額を推計できる規定の新設です。改正景品表示法(令和5年法律第29号)は2024年10月1日施行です(2026年9月時点)。

割増算定率1.5倍(実質4.5%)の対象

過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者が再び違反すると、算定率が1.5倍になります。通常3%が実質4.5%になり、同じ売上でもリスク金額が1.5倍に膨らみます。

区分算定率売上1億円の課徴金
初回3%300万円
10年以内に再違反4.5%450万円

判断の目安は次の通りです。

  • 過去10年以内に納付命令の履歴がある
  • 同一・別商品を問わず優良誤認などで再び違反した
  • この2つが重なると割増の対象になる

資料がないと売上額を推計される規定

対象商品の売上を示す資料を事業者が提出しない場合、消費者庁が売上額を推計して課徴金を算定できる規定が新設されました。「資料がないから算定できない」で逃げる余地はありません。帳簿・売上台帳を対象期間分そろえておくことが、過大な推計を避ける前提になります。

よくある質問

課徴金は広告費と売上のどちらにかかりますか?

対象商品・役務の売上額にかかります。広告にかけた費用や利益ではなく、優良誤認・有利誤認の表示をしていた期間に販売した対象商品の売上額に3%を乗じて算定します。景品表示法第8条に基づく計算で、広告予算が小さくても売上が大きければ課徴金額は膨らみます。試算では広告費ではなく対象売上を起点に置いてください。

売上がいくらまでなら課徴金は課されませんか?

算定した課徴金額が150万円未満なら不賦課です。売上額×3%で計算するため、対象売上がおおむね5,000万円未満だと150万円に届かず、境目の目安になります。ただし対象期間や対象商品の切り分けで売上額は変わります。5,000万円はあくまで概算の分岐点で、最終判断は所管行政や専門家に確認してください。

課徴金の対象期間はどこからどこまでですか?

課徴金対象行為をやめた日から遡って最大3年間が対象期間です。優良誤認・有利誤認の表示をしていた全期間の売上を積み上げるため、掲載が長いほど対象売上は増えます。3年を超える古い期間は対象外です。試算では、表示を開始した日と停止した日を先に特定し、その間の対象商品の売上を集計します。

自主的に返金すれば課徴金は減りますか?

所定の手続による返金措置分は課徴金額から減額され得ます。消費者庁に返金措置の実施計画を認定申請し、購入者へ返金した額が差し引かれる仕組みです。要件を満たさない任意の返金は対象外で、自動的に減るわけではありません。減額を狙うなら、対象者への告知方法や期限などの手続要件を先に確認してください。

機能性表示食品や特保でも課徴金の対象になりますか?

届出や許可があっても対象になり得ます。機能性表示食品の届出や特定保健用食品の許可は、広告表現の適法性まで保証するものではありません。届出の範囲を超えた効果や、裏付けのない優良誤認と判断されれば、景品表示法第8条の課徴金の対象になるおそれがあります。届出内容と広告表現が一致しているかを確認してください。

まとめ

健康食品広告の課徴金は、対象売上×3%で概算できます。まず着手すべきは、優良誤認・有利誤認に当たり得る表示を掲載していた期間の特定です。開始日と停止日を確定し、その間の対象商品の売上を集計すれば、3%を乗じて自社のリスク金額が見えます。課徴金額150万円未満なら不賦課で、対象売上おおむね5,000万円が境目です。対象期間は行為停止日から遡って最大3年間なので、掲載が長い商品ほど額は膨らみます。減額を検討するなら、返金措置の手続要件を早めに確認してください。届出済みの機能性表示食品や特保でも、表示が届出範囲を超えれば対象になり得ます。自社の主力商品について、表示期間・対象売上・減額余地の3点を社内で試算に落とすことから始めてください。

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