健康食品の広告で措置命令が出る典型は、景品表示法第5条第1号の優良誤認、その裏づけを問う不実証、No.1表示、体験談の4パターンです。措置命令とは、景品表示法第7条第1項に基づき、消費者庁または都道府県知事が、不当表示をした事業者に対し表示の差止め・再発防止・一般消費者への周知徹底などを命じる行政処分のことです。2026年9月時点で、命令は事前の調査と弁明の機会を経て出され、内容は公表されます。自社の景表法×健康食品DB43件の内訳と直近の処分事例をもとに、命令が出る流れ・対象になった表現・受けた後の影響を整理し、自社広告が典型パターンに該当するおそれを一次判断できる形にまとめました。
健康食品の措置命令とは?誰が何を命じる処分か
措置命令とは、景品表示法に違反する広告表示に対し、行政が違反行為の差止めや再発防止を命じる行政処分のことです。自社の景品表示法×健康食品のデータベース(2010年4月1日〜2026年6月29日の43件)では、措置命令が20件、課徴金納付命令が11件を占めます(2026年9月時点)。
措置命令の定義と根拠条文
根拠は景品表示法第7条第1項です。命令の中身は主に次の3点です。
- 違反した広告表示の差止め
- 再発防止策を講じること
- 違反した事実を一般消費者へ周知すること
健康食品で問題になりやすい類型は、実際より著しく優良と誤認させる優良誤認表示(景品表示法第5条第1号)です。あわせて、健康保持増進効果の著しい誇大表示(健康増進法第65条第1項)に触れる場合もあります。
消費者庁と都道府県のどちらが出すのか
措置命令は消費者庁が出すほか、都道府県知事も出せます(2026年9月時点)。全国流通か地域限定かで担当が分かれます。
| NG(誤解しやすい理解) | OK(正確な理解) |
|---|---|
| 措置命令は消費者庁だけが出す | 都道府県知事も景品表示法第7条第1項で出せる |
| 罰金を支払う刑事罰 | 行為の差止め等を命じる行政処分 |
通販で全国に広告を出す事業者は、両方の主体が命令権限を持つ前提で表現を確認する必要があります。
措置命令はどんな流れで出る?調査から公表までの手順
措置命令は、消費者庁や都道府県の調査から始まり、事実確認、弁明の機会の付与、命令、公表という段階を踏みます。突然通知が届く処分ではなく、資料提出などのやり取りを経て決まります。
調査から命令までのステップ
健康食品広告の措置命令は、次の順で進みます(2026年9月時点)。
- 調査:消費者庁または都道府県が広告表示を確認する
- 資料要求:景品表示法第7条第2項に基づき、効果の合理的根拠資料の提出を求める
- 事実確認:提出資料が根拠として不十分かを判断する
- 弁明の機会の付与:事業者が反論する場を与える
- 措置命令:違反と認定された場合に発出する
- 公表:消費者庁の報道発表、都道府県のウェブページで一般に公開する
景品表示法第7条第2項(不実証広告規制)では、資料の提出期限は原則15日です。期限内に合理的な根拠資料を出せない場合、その表示は優良誤認と扱われます。この規制の詳しい運用は根拠資料が求められる場面の解説で整理しています。
弁明の機会と反論のタイミング
反論できるのは、命令が出る前です。措置命令の前には弁明の機会が付与され、事業者は表示の根拠や事実関係を主張できます。
- 反論の場:資料提出と弁明の2段階で意見を述べられる
- 命令後:発出された措置命令は、原則そのまま公表される
弁明で根拠を示せず命令に至ると、社名と違反表現が公表されます。資料要求の15日という短さから、根拠資料を先に整えていない事業者ほど対応が間に合いません。手続の詳細や個別案件の判断は、所管行政・専門家に確認してください。
| 段階 | 反論できるか |
|---|---|
| 資料要求(15日以内) | 根拠資料を提出できる |
| 弁明の機会 | 事実関係を主張できる |
| 措置命令の発出後 | 原則、公表を前提に対応する |
措置命令を受けると広告や事業にどんな影響が出る?
措置命令は、違反表示の差止めだけで終わりません。景品表示法第7条第1項に基づき、再発防止と消費者への周知徹底までが命じられます(2026年9月時点)。健康食品通販では、LP・定期購入・在庫の運用全体に波及します。
命令に必ず含まれる3つの措置
命令には、次の3つが必ず盛り込まれます。
- 違反表示の差止め:対象のLP・広告表現の停止(掲載中の訴求を書き換える必要が生じます)
- 再発防止措置:社内審査体制の整備と、同種表現の再掲載の防止
- 一般消費者への周知徹底:違反事実の公表(自社サイトや新聞での告知を求められる場合があります)
健康食品通販での具体的な波及は次のとおりです。
- 在庫:対象商品の訴求変更で販売ページを作り直す
- 定期購入:初回訴求が差止め対象だと、既存の継続導線も見直す
- 決済・媒体:公表により決済審査の再確認や広告出稿の停止が起きる
処分表現とその改善方向は次のように整理できます。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 飲むだけで脂肪が落ちる | 食生活の見直しとあわせてお使いください |
| 医者も推奨No.1 | (順位・推奨の訴求を外す) |
| 3ヶ月で−10kg(体験談) | 個人の感想であり効果を保証しません |
命令に従わない場合の罰則
命令に従わない場合、景品表示法第36条により、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(またはその併科)の対象となります(2026年9月時点)。法人には両罰規定も適用されます。
あわせて課徴金納付命令が検討される場合があります。景品表示法第8条に基づき、算定率は対象売上額の3%、対象期間は最長3年です。金額規模の試算は課徴金がいくらになるかの計算方法で確認できます。
公表による取引先の取引見直しや広告媒体の審査厳格化は、命令内容以上に事業への影響が長期化します。
健康食品でどんな表現が措置命令や処分の対象になった?
対象になったのは、根拠のない効果の言い切り、No.1などの最上級表示、体験談による効能の暗示です。自社の景品表示法×健康食品データベース43件(2010年4月〜2026年6月)でも、優良誤認39件、不実証広告規制27件が突出します。景品表示法第5条第1号・第2号(2026年9月時点)に該当するおそれが高い型です。
処分事例に出た具体的なNG表現
匿名化した直近の処分では、次の表現が認定されました。
- 2026年6月29日 措置命令(健康食品通販):「SNSでも大人気!」「(商品名)がSNSでも!」
- 2025年6月30日 課徴金納付命令(機能性表示食品等):「3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた方法がすごい!」「ダイエットサプリ No.1」
- 2025年8月28日 行政指導(健康食品等):「高めの血圧がみるみる…」「現役医師の9割が推奨しているんです!」
数値の入った体験談、根拠を示さないNo.1、医師や専門家の推奨は、いずれも差し戻しで頻出します。言い換えの方向は次のとおりです。
| NG表現 | 言い換えの方向 |
|---|---|
| 3週間で60.8kg→47.2kg | 摂取の目安と併用条件のみ記載 |
| ダイエットサプリ No.1 | 調査主体・時点・範囲を明記できないなら削除 |
| 現役医師の9割が推奨 | 調査根拠がなければ使わない |
体験談は、過去の摘発例をまとめた記事と自社広告を照合して確認します。
違反類型で多いパターン
43件の内訳では、優良誤認39件、不実証広告規制27件、No.1表示9件、体験談8件、ステルスマーケティング告示6件の順です。効果の言い切りと根拠不提出が二大類型で、この2つに該当しないかを最初に見ます。個別案件の適法・違法の最終判断は、所管行政や専門家に確認してください。
措置命令と課徴金・行政指導は何が違う?
3つは、法的な強さと事業者の負担が違います。措置命令は再発防止を命じる行政処分、課徴金納付命令は金銭の納付を命じる処分、行政指導は処分ではない改善要請です。健康食品広告の違反でどれが選ばれるかは、違反の重さと売上規模で振り分けられます。
3つの違いを一覧で比較
| 行政アクション | 根拠条文 | 法的性質 | 主な負担 |
|---|---|---|---|
| 措置命令 | 景品表示法第7条 | 行政処分 | 再発防止・公表 |
| 課徴金納付命令 | 景品表示法第8条 | 行政処分 | 金銭納付 |
| 行政指導 | 条文上の処分ではない | 改善要請 | 表示の自主修正 |
(いずれも2026年9月時点)
課徴金の枠組みは次のとおりです。
- 対象は違反表示に関する商品・役務の売上額
- 算定率は対象売上額の3%
- 対象期間は最長3年間
金銭負担が発生するのは課徴金納付命令だけです。措置命令と両者の使い分けを整理した記事で、どちらが自社に近いかを確認できます。
行政指導と処分の境目
行政指導は処分ではなく、改善を求める要請にとどまります。命令のような法的な強制力はなく、公表や再発防止義務も伴いません。違反が軽微、または早期に修正された場合に選ばれやすい対応です。
自社の景品表示法×健康食品DB43件では、行政指導・改善指導は5件、措置命令は20件でした。件数差が示すとおり、健康食品広告では改善要請より処分に至る事案が多くなります。指導で済むと想定した表現が、そのまま措置命令の対象になるおそれがあります。
措置命令を受けないために健康食品の広告で今できることは?
措置命令を避けるには、優良誤認・不実証・No.1・体験談という処分の典型4類型に自社広告を照らし、該当箇所を配信前に修正することが起点です。自社DB43件(2010年4月〜2026年6月)でも、優良誤認39件・不実証27件が上位を占めます。
自社広告のセルフチェック項目
配信前に、以下を1表現ずつ確認します。
- 痩身・減量:「飲むだけで痩せる」など摂取と結果を断定していないか
- 数値:「2週間で3kg減」など効果を保証する数字を根拠なく載せていないか
- 体験談:「○kg痩せた」という声で効能を暗示していないか(自社DBで体験談型8件)
- No.1・最上級:「売上No.1」の調査出典と対象範囲が明示されているか
- 医師推奨:「医師が推奨」を効果の裏付けとして使っていないか
- SNS人気:「SNSで話題」で有効性を連想させていないか
審査実務では「○kg痩せた」系の体験談が差し戻されやすく、打消し表示を添えても効能の暗示が残ると判断されます。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 2週間で3kg減 | 食事管理とあわせた使用を想定した商品です |
| 売上No.1 | ○○調査(2025年、対象□社)で最多回答 |
| 医師も推奨 | (効果の裏付けには使わない) |
根拠資料をそろえておく範囲
不実証広告規制(景品表示法第7条第2項、2026年9月時点)では、消費者庁の資料提出要求から15日以内に合理的根拠を提出する必要があります。効果効能をうたう表現ごとに、試験データや出典を配信前から整理しておくことが前提です。表現の妥当性は違反を防ぐ具体策で確認できます。広告表現の改善相談で対応できるのは表現面の点検までで、個別案件の法的判断の代行は行いません。
よくある質問
措置命令に従わないとどうなりますか?
措置命令は法的義務で、従わない場合は景品表示法第36条により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金などの罰則対象になります。命令は行政指導と異なり従うか従わないかを選べる性質のものではありません。差止めや再発防止の実施状況は行政に確認され、対応が不十分と判断されれば刑事罰の検討に進む余地があります。個別案件の判断は所管行政と専門家へ確認してください。
措置命令と課徴金納付命令は同時に来ることがありますか?
優良誤認や有利誤認では、景品表示法第7条第1項の措置命令に加え、第8条の課徴金納付命令が検討される場合があります。ただし両者は要件が別で、課徴金は対象期間中の売上額を基礎に算定されます。措置命令が出ても課徴金が課されない例、逆の例のいずれもあり、片方が来たからもう片方は来ないとは判断できません。最終的な適用判断は所管行政に委ねられます。
小規模事業者や個人でも措置命令の対象になりますか?
景品表示法は表示をした事業者を規模を問わず対象とするため、小規模事業者や個人事業主でも措置命令を受けるおそれがあります。売上規模が小さいことや、制作を外部に委託していたことは、表示主体としての責任を当然に免れる理由にはなりません。ECモールへの出店者やアフィリエイトを使う事業者も、自社が表示主体と評価されうる点に注意が必要です。
措置命令は消費者庁と都道府県のどちらから来ますか?
健康食品広告の措置命令は、景品表示法第7条第1項に基づき消費者庁と都道府県知事のいずれも出す権限を持ちます。複数都道府県にまたがる広範な事案は消費者庁、地域限定の事案は都道府県が担当する傾向があります。公表先も命令主体ごとに分かれ、消費者庁の命令は同庁サイト、都道府県の命令は各自治体サイトで公表されます。どちらから来ても法的効力は同じです。
機能性表示食品でも措置命令や課徴金の対象になりますか?
機能性表示食品でも、届出の範囲を超えた効果を広告でうたえば措置命令や課徴金の対象になるおそれがあります。届出をしている事実自体が、表示内容の適法性を保証するわけではありません。自社の景表法×健康食品DBには、2025年6月30日付で課徴金納付命令に至った事例も含まれます。届出表現と広告表現がずれていないかを、パッケージとLP・広告クリエイティブの両方で照合してください。
まとめ
健康食品の措置命令は、景品表示法第5条第1号の優良誤認、不実証、No.1表示、体験談という4つの型に集中します。命令は景品表示法第7条第1項に基づき消費者庁または都道府県知事が出し、従わなければ第36条で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、優良誤認では第8条の課徴金も別要件で検討されます。自社広告を見直すときは、まず効果効能をうたう表現に届出や試験など裏づけがあるか、次にNo.1・満足度・ランキングの根拠となる調査の時点と範囲、そして体験談が平均的な効果と誤認させていないかの3点を、LP・パッケージ・広告クリエイティブで照合してください。1つでも該当のおそれがあれば、優良誤認や不実証を掘り下げた対策記事、または全体像を扱う親記事に進んで確認することを勧めます。
無料・オンライン
広告表現の改善相談
自社の広告・LPの表現で気になる箇所を、広告審査の実務者と一緒に確認します。修正が必要な箇所と、言い換えの方向性をその場でお伝えします。
- LP・バナー・商品ページの表現を確認
- 言い換えの方向性をその場で提案
- 社内ルールづくりの進め方も相談できる
法的な適否の判断を代行するものではなく、表現と運用の改善のご相談として承ります。
本記事は、薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)の資格を持ち、健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当する広告審査の実務者が監修しています。(2026年9月時点の情報です)
