ダイエットサプリの課徴金は、脂肪燃焼や体重減少を根拠なく訴求した痩身表現が景品表示法第5条第1号の優良誤認と認定されて科されます。ある健康食品通販のA社では課徴金1086万円が命じられました。課徴金納付命令とは、優良誤認表示などに対し消費者庁が対象商品の売上額の一定割合の金銭納付を命じる行政処分のことです。2010年以降に確認した43件の違反事例を突き合わせると、痩身表現のNGには共通する型があります。1件の処分の解剖と43件の類型を照らし、自社広告のどの表現が課徴金リスクに該当するおそれが高いか、どこを差し替えれば良いかを社内チェックの単位で判断できるよう整理します。
ダイエットサプリの課徴金事例とは?処分の概要から見る
2025年6月30日、消費者庁が機能性表示食品のダイエットサプリを販売するA社(健康食品・サプリメント)に対し、1086万円の課徴金納付命令を出した事例です(2026年9月時点の公表情報)。景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)と第8条(課徴金納付命令)を根拠とします。
どんな処分だったのか(公表日・処分・金額)
処分の骨格は次の4点です。
- 公表日:2025年6月30日/公表元:消費者庁
- 処分:課徴金納付命令、課徴金額1086万円
- 課徴金対象期間:令和4年7月〜令和5年5月(約11か月)
- 対象商品:機能性表示食品のダイエットサプリ
自社の違反事例DB(景品表示法×健康食品、2010年4月1日〜2026年6月29日の43件)でみると、課徴金納付命令は11件です。措置命令20件に次ぐ規模で、金銭負担を伴う処分として位置づきます。両者の違いは処分の種類ごとの重さの差で整理しています。
課徴金納付命令とは何を意味するのか
課徴金納付命令とは、景品表示法第8条に基づき、優良誤認・有利誤認表示を行った事業者に金銭の納付を命じる処分のことです(2026年9月時点)。
- 表示をやめる措置命令と異なり、対象期間の売上額に応じた金銭負担が生じる
- 算定率は対象商品の売上額の3%(景品表示法第8条)
- 今回の1086万円は令和4年7月〜令和5年5月の売上を基礎に算定された
売上規模が大きいほど負担額も比例して増える構造のため、痩身表現の一つが全期間の売上を課徴金の基礎に変える点が事業者リスクの核心です。
違反と認定された痩身表現は具体的に何だったのか
課徴金の対象になったのは、大きく2種類の表現です。摂取するだけで容易に痩せるかのように示した痩身訴求と、客観性を欠く調査に基づくNo.1表示。どちらも景品表示法第5条第1号(優良誤認表示、2026年9月時点)で問われました。
痩身効果を暗示した表現
認定された痩身表現は、運動や食事制限をしなくても腹部の脂肪が落ちるかのような印象を与えるものでした。
- 「3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた方法がすごい!」
- 「食べてないのに太るのは『燃焼力』がないから」
摂取するだけで誰でも容易に腹部の脂肪が落ちるかのように示した点が、優良誤認と認定されています。数値と期間をセットで見せる体験談による効果の暗示は、自社の違反事例43件のうち体験談による効能の暗示が8件を占め、優良誤認(効果・性能)は39件と最多の類型です。
No.1・最上級を示した表現
No.1表示も、痩身訴求と同じ第5条第1号で問われました。認定表現は次のとおりです。
- 「30〜60代女性が選ぶダイエットサプリ No.1」
- 「一番効果が期待できそうなダイエットサプリ」
| 認定された表現 | 問われた区分 |
|---|---|
| 3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた | 効果・性能の優良誤認 |
| 食べてないのに太るのは燃焼力がないから | 効果・性能の優良誤認 |
| 30〜60代女性が選ぶダイエットサプリNo.1 | No.1・最上級表示 |
| 一番効果が期待できそうなダイエットサプリ | No.1・最上級表示 |
No.1表示・最上級表示は自社DBで9件確認されています。痩身効果の断定とNo.1表示という見た目の異なる2系統が、いずれも同一条文の優良誤認として一括で処分された構造が、この事例の要点です。
なぜ痩身表現が景品表示法違反になるのか(条文・告示)
摂取するだけで腹部の脂肪が落ちるかのような表示は、実際の商品性能を超えて優れていると誤認させます。この構造が景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)に該当するおそれが高いと整理されます(2026年9月時点)。
優良誤認表示に該当する理由(第5条第1号)
景品表示法第5条第1号は、商品の内容について実際より著しく優良と示す表示を禁じます。本事例では「3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた」という表示が、誰でも同じ効果を得られるかのような認識を与えました。
- 断定的な数値変化を示し、個人差や条件を打ち消していない
- 機能性表示食品の届出範囲を超えた脂肪減少の外見変化を訴求している
- 「9割がしていない」など根拠不明の割合を添えている
根拠を出せないと課徴金になる仕組み(第7条第2項)
景品表示法第7条第2項(不実証広告規制)では、効果を裏付ける合理的根拠資料の提出を消費者庁が求められます。本事例では資料を求められたものの、提出された内容が認められませんでした。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 原則15日以内 |
| 期限内に示せない場合 | 当該表示は優良誤認とみなされる |
| 課徴金の算定 | 対象商品の売上額の原則3%(第8条) |
痩身効果を示す表示は、ヒト試験等の客観的データを掲載前に取得する運用が前提になります。根拠資料が認められなかった場合の扱いを踏まえると、社内審査の段階で提出可能な資料の有無を確認する必要があります。本事例では令和4年7月〜令和5年5月の対象期間に対し、1086万円の課徴金が命じられました。
痩せる表現はどう言い換えれば課徴金リスクを下げられるか
摂取するだけで痩せる、数値で示す体験談といった表現は、機能性表示食品として届け出た機能の範囲に収めた記載へ差し替えます。届出範囲外の脂肪燃焼・腹部痩身の外見変化は訴求しません。景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高いためです(2026年9月時点)。
NG表現とOK方向の対比
| NG表現 | OK方向 |
|---|---|
| 摂取するだけで腹部の脂肪が落ちる | 届出表示どおりに「本品には〇〇が含まれ、△△の機能が報告されています」と記載する |
| 3週間で60.8kg→47.2kg | 数値の変化を効果として断定しない。届出範囲を超える減量数値は出さない |
| 何をやっても太る理由が判明 | 体質や原因を断定せず、生活習慣の一要素として位置づける |
差し替えの判断基準は次の3点です。
- 届け出た機能表示の文言を起点にし、これを超える表現を足さない
- 脂肪燃焼・サイズダウンなど届出範囲外の外見変化を約束しない
- 合理的根拠(ヒト試験データ等)が提出できない訴求は掲載しない
体験談・ビフォーアフターを載せるときの打消し表示
体験談やビフォーアフター画像を使うときは、効果の個人差と平均的な効果との差異を打消し表示で明記します。8件の自社DB事例でも体験談による効能の暗示が確認されており、利用者の声を使う広告の注意点を踏まえた運用が必要です。
- 打消し表示は本文と同等に認識できる大きさ・位置で示す(消費者庁「打消し表示に関する留意点」)
- 「個人の感想であり効果を保証しない」の一文を、体験談のすぐ近くに置く
- 平均的な効果と乖離する数値(60.8kg→47.2kg等)はそのまま体験談に転用しない
社内チェックで見落としが多いのは、打消し表示を画面下部やリンク先に離して置く運用です。本文から離れた注記は打消しとして機能しないおそれが高く、第5条第1号のリスクが残ります。
No.1・最上級表示はなぜ課徴金の対象になったのか
No.1表示が課徴金の対象になった理由は、根拠となる調査が「実際に商品を利用した者」ではなく、印象を問う設問だったためです。A社(機能性表示食品・特保・健康食品・サプリメント・通販・EC全般)は「30〜60代女性が選ぶダイエットサプリNo.1」を掲げ、令和4年7月〜令和5年5月の対象期間に1086万円の課徴金を命じられました。
No.1表示に必要な根拠調査の条件
No.1・最上級表示の根拠は、当該商品と競合を実際に利用した者、または知見を有する者を対象とした客観的調査が必要です。以下を明示できないと景品表示法第5条第1号に該当するおそれがあります(2026年9月時点)。
- 比較対象の選定基準
- 調査設計と設問
- 実施機関と調査期間
- 有効回答数
消費者庁は2024年にNo.1表示への措置命令を短期間で複数発出しており、最上級表示の審査が強化されています。課徴金額の算定方法も併せて確認してください。
『〜と思う』系の印象調査が危ないのは
印象を問う調査は、表示内容と対応しないため危険です。「コスパが良いと思える」「一番効果が期待できそう」は、利用実態ではなく回答者の予想を集めた数値です。
| NG表現 | 差し替えの方向 |
|---|---|
| 一番効果が期待できそうなダイエットサプリ | 訴求せず、実利用調査の実数を明示 |
| コスパが良いと思えるダイエットサプリ | 価格の客観的な比較データに置換 |
複数の課徴金・措置命令に共通する痩身表現のNGパターンは何か
痩身表現の課徴金・措置命令に繰り返し現れるのは、「努力なしで痩せる」「短期・数値で保証する」の2つの型です。自社DB43件(措置命令20件・課徴金納付命令11件・調査結果の公表5件・行政指導5件ほか、2010年4月〜2026年6月)でも、優良誤認(効果・性能)が39件と最多を占めます。
共通するNGの型(無努力・短期・数値保証)
無努力と短期・数値保証は、どちらも「摂取だけで容易に痩せる」印象を与える点で優良誤認(景品表示法第5条第1号、2026年9月時点)に該当するおそれが高い型です。
| NG表現の型 | 認定された表現の例 |
|---|---|
| 無努力(食事制限・運動なし) | 「無理な食事制限過度な運動一切なし」(2025年8月28日 行政指導事例) |
| 短期・数値保証 | 「短期間で容易に顕著な腹部の痩身効果」(2025年3月28日 措置命令事例) |
自社広告に照合するときの確認軸は次の3点です。
- 努力の否定:「〜なし」「〜せずに」で努力工程を打ち消していないか
- 期間の断定:「3週間で」など達成期間を保証していないか
- 数値の提示:「60.8kg→47.2kg」など体重変化を示していないか
アフィリエイト・第三者媒体も対象になる
アフィリエイトサイト・ASP経由のLP・バナーは、自社広告と同等に景品表示法の規制対象です。掲載主体が第三者でも、広告主が表示内容を管理できる立場にあれば責任を問われます。ASPへ渡した原稿だけでなく、公開後のLP・バナーも定期モニタリングの対象に含め、過去の摘発例からNG表現の傾向を照らして事前審査する運用が必要です。
同じ業種が今すぐ確認すべきチェック項目は何か
課徴金1086万円の事例から持ち帰れる確認項目は、掲載前の根拠取得と掲載後の第三者媒体モニタリングの2軸です。景品表示法(2026年9月時点)第5条第1号の優良誤認に該当するおそれを、社内チェックの単位に落とし込みます。
| 確認タイミング | 差し戻されやすい実務ポイント |
|---|---|
| 掲載前 | 痩身効果の合理的根拠(ヒト試験データ等)の取得・保管 |
| 掲載後 | アフィリエイト・LP等の第三者媒体の表示管理 |
掲載前に確認する項目
- 痩身効果の表示について、消費者庁に提出できる合理的根拠(ヒト試験データ等)を掲載前に取得・保管しているか
- 機能性表示食品として届け出た機能の範囲を超える効能表示(脂肪燃焼・腹部痩身の外見変化)を行っていないか
- No.1・最上級表示の根拠が、実際に商品を利用した者を対象とした客観的調査に基づくか
掲載後に定期モニタリングする項目
- アフィリエイト・LP等の第三者媒体の表示を定期的に確認・管理しているか
- 体験談・ビフォーアフター画像に、効果の個人差を打消し表示で明記しているか
最終判断は所管行政・専門家に確認し、違反を防ぐ実務対策を掲載前チェックの工程に組み込みます。
よくある質問
機能性表示食品なら痩身効果をうたっても課徴金にならないのか
課徴金の対象になり得ます。機能性表示食品で表示できるのは届け出た機能の範囲内に限られます。脂肪燃焼や外見の変化、体重減少といった届け出範囲外の訴求は、景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高いです。届け出た機能性の文言と広告コピーを1対1で照合し、範囲を超えた表現がないかを確認してください。届け出制度は効果を保証する仕組みではありません。
アフィリエイト会社が勝手に書いた表現でも自社が課徴金を受けるのか
受ける可能性があります。アフィリエイトなど第三者媒体の表示も、販売事業者の広告と同等に景品表示法の対象です。表示の作成を外部に委託していても、商品の販売主体である事業者が責任を問われる構造になっています。提携先の記事やバナーの痩身表現を定期的に確認し、逸脱した表現を放置しない管理体制が要ります。作成者が誰かは責任の有無を左右しません。
『個人の感想です』と打消し表示を入れれば体験談は載せてよいのか
打消し表示だけでは救済されません。『個人の感想です』を添えても、本体表示が優良誤認と評価されれば景品表示法違反の判断は変わりません。体験談を用いる場合は、個人差がある旨と平均的な結果との差異を明記し、打消し表示が本体表示と同等に見やすい配置であることが要件になります。小さな注記で効果を打ち消す作りは、見やすさの要件を満たしません。
課徴金1086万円はどう計算されたのか、自社の場合いくらになるのか
課徴金は原則として対象期間中の対象商品の売上額の3%で算定されます。1086万円もこの仕組みに沿って、優良誤認と認定された表示期間の当該商品の売上高を基礎に計算されています。自社の見込み額は、違反表示を行った期間と、その期間の対象商品売上高から概算できます。算定の起算点や除外の扱いには細かい条件があり、詳細は課徴金の計算方法をまとめた記事で確認してください。
措置命令と課徴金納付命令は何が違い、どちらが先に来るのか
措置命令は表示の差止めや再発防止を命じる行政処分で、課徴金納付命令は金銭的不利益を科す処分です。両者は性質が異なり、併科されることがあります。実務上は優良誤認などの認定を前提に措置命令が出され、課徴金の要件を満たす場合に課徴金納付命令が続く流れが多いです。順序や併科の関係は事案で異なるため、両処分を整理した記事で確認してください。
まとめ
自社のダイエットサプリ広告を見直す起点は、痩身の効果を数値や断定で約束していないかの確認です。脂肪燃焼・体重減少・外見変化を裏付けなく訴求する表現は、景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高く、課徴金1086万円のような処分につながります。まず届け出た機能性や合理的根拠の範囲と、広告コピーを1対1で照合してください。No.1・最上級表示は、実利用者や知見者を対象にした客観的調査と表示内容が対応しているかを確認します。体験談は個人差と平均との差異の明記、打消し表示の見やすさを点検します。アフィリエイトなど第三者媒体の痩身表現も自社の対象範囲に含めて棚卸ししてください。43件の類型に共通するNGの型を自社コピーに当て、該当箇所を範囲内の表現へ差し替えることが、課徴金リスクを下げる具体的な一歩になります。個別の違法・適法の最終判断は、所管行政や専門家に確認してください。
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自社の広告・LPの表現で気になる箇所を、広告審査の実務者と一緒に確認します。修正が必要な箇所と、言い換えの方向性をその場でお伝えします。
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法的な適否の判断を代行するものではなく、表現と運用の改善のご相談として承ります。
監修:薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)資格を持つ広告審査の実務者。健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当しています。(2026年9月時点の情報です)
