モニターに集めさせたSNS投稿を、識別表示を付けずに自社サイトへ転用すると、ステルスマーケティング告示違反として措置命令の対象になります。ステルスマーケティング告示とは、景品表示法第5条第3号に基づき2023年10月1日から運用される、事業者の広告であることを消費者が判別しにくい表示を不当表示と定めた告示のことです。自社DBで匿名集計した施行後の健康食品処分では、投稿元にPR表記があっても、転載先の自社ページで表示が抜けた箇所が繰り返し確認されました。判断の軸は対価や無償提供の有無ではなく、事業者が投稿へ関与したかどうかです。掲載箇所ごとの識別表示の要否と、転用フローへ景表法レビューを組み込むかを、自社の文言と照らして判断できます。
健康食品のステマで措置命令になった事例はどんな内容ですか?
2025年3月25日に消費者庁が公表した、A社(健康食品・サプリメント)への措置命令です。モニターに依頼したInstagram投稿を自社サイトへ転載しながら、事業者の依頼である事実を示さなかった点が、景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示、2026年9月時点)に該当すると認定されました。
処分の概要(公表日・処分・法律)
対象は目のサプリメントの販売表示です。表示期間は約2か月間に限られますが、措置命令に至りました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 2025年3月25日 |
| 公表元 | 消費者庁 |
| 処分 | 措置命令(景品表示法第7条第1項) |
| 根拠 | 景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示) |
| 事業者 | A社(健康食品・サプリメント) |
| 表示期間 | 令和6年6月4日〜同年7月29日(約2か月間) |
何をして違反になったのか(モニター投稿の転用)
モニター募集サイトを通じて第三者にInstagram投稿を無償で依頼し、その投稿画像を自社ウェブサイトに掲載した行為が問題とされました。認定された流れは次のとおりです。
- モニターへ商品を無償提供し、Instagram投稿を依頼した
- 投稿の画像を自社サイトの口コミ枠に転載した
- 転載先で「事業者の依頼による投稿」である旨を一切示さなかった
- 一般消費者から第三者の自発的な口コミと誤認されうる状態になった
投稿者本人のアカウントに識別表示があっても、自社サイトへ転載した時点で識別情報が消える構造が、処分の分かれ目でした。
自社DB集計から見た健康食品ステマの位置づけ
自社データベース(景品表示法×健康食品、2010年4月〜2026年6月の43件)では、ステマ告示は6件で、その中心が措置命令です。件数最多の優良誤認39件に比べれば少数ですが、過去の広告表現をめぐる処分の傾向と並べると、SNS施策起因の類型として無視できない規模になっています。
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ステマ規制 社内運用チェックリスト
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ステマ措置命令で違反と認定された表現は何ですか?
認定されたのは、効能を断定する言葉ではなく、日常的な口コミ調の文章6件です。A社(健康食品・サプリメント)が目のサプリのモニター投稿を自社サイトに転載し、事業者の依頼である事実を示さなかったため、景品表示法第5条第3号(2026年9月時点)に該当すると判断されました。
認定された表現の一覧
消費者庁が2025年3月25日に公表した措置命令では、次の表現が問題視されました。表示期間は令和6年6月4日から同年7月29日までの2か月弱です。
- 「『わたしも』使っています from Instagram」
- 「1日1粒だから続けやすい」
- 「つるんと飲めるソフトカプセル」
- 「小粒で飲みやすいよ♪」
- 「カプセルだから味もないし、スルッと飲みやすいから錠剤が苦手な人にもおすすめ」
いずれも飲みやすさや続けやすさを語るだけで、効果効能の断定はありません。
表現自体は薬機法NGでなくても問われた理由
問われたのは文言の中身ではなく、事業者の依頼を隠した第三者投稿の体裁です。無償提供と投稿指示があるにもかかわらず、掲載箇所に「PR」「モニター提供品」の識別がない状態が、一般消費者に自発的な口コミと誤認させると認定されました。
| NG(識別なし) | OK(識別を付加) |
|---|---|
| 「わたしも使っています from Instagram」 | 「※無償提供品を使用したモニター様のご投稿より抜粋 #PR」 |
| 投稿画像をそのまま転載 | 画像内または直近に「モニター様のご投稿」と明記 |
口コミ・お客様の声コーナーの落とし穴
自社サイトの「Instagramより」「ユーザーの声」コーナーは、施策起因の投稿が混在すると全体が違反リスクを帯びます。体験談を使った広告の線引きと同じく、掲載の起点が自発か依頼かで判断が分かれます。
- モニター・アンバサダー起因の投稿が一般口コミと同列に並んでいないか
- 全件について投稿の起点を説明できるか
6件の認定表現のうち、効能を語ったものは1件もありません。
なぜモニター投稿の転用がステマ告示違反になるのですか?
モニター投稿の転用が違反になるのは、事業者が投稿方針を指示した表示なのに、自社サイトに第三者の自発的な口コミとして載せ、事業者の関与を隠したためです。景品表示法第5条第3号のステルスマーケティング告示に該当します(2026年9月時点)。
ステルスマーケティング告示とは
ステルスマーケティング告示とは、事業者の表示であるにもかかわらず、それが一般消費者に分かりにくい表示を不当表示に指定する内閣府告示のことです。令和5年3月28日指定、同年10月1日施行で、景品表示法第5条第3号の対象になりました(2026年9月時点)。
『事業者の表示であることが不明瞭』の判断基準
次の3点がそろうと、掲載箇所は『事業者の表示』に該当するおそれが高くなります。
- モニター募集や商品の無償提供を通じて投稿を得ている
- 投稿の方針・内容を事業者側が指示している
- 掲載箇所に「PR」「提供」などの識別表示がない
自発的な口コミと誤認される状態であれば、措置命令に至る健康食品広告の全体像と同じ構造の違反と評価されます。
投稿元にPR表示があっても転載先で再度必要な理由
景品表示法の判断は掲載箇所単位です。投稿者本人のInstagramにPR表示があっても、自社サイトへ転載した時点で新たに識別表示の義務が生じます。
| 掲載箇所 | NG | OK |
|---|---|---|
| 自社サイトの転載画像 | 表示なしで「from Instagram」 | 画像内か直近に「#PR/モニター提供品」 |
| 口コミ引用コーナー | 施策投稿を無表示で混在 | 「※無償提供品を使用した投稿より抜粋」 |
転載先に識別表示がなければ、その1箇所だけで第5条第3号違反と評価されうる点が、実務で最も見落とされます。
ステマ違反に課徴金はかかりますか?措置命令だけで済む理由
ステルスマーケティング告示(景品表示法第5条第3号)単独では、同法第8条の課徴金納付命令の対象外です。2026年9月時点、この類型の処分の中心は措置命令です。ただし効果効能の裏づけを欠く表現が加わると優良誤認となり、対象売上額の3%が課徴金となりえます。
ステマ告示違反が課徴金対象外である理由
課徴金は同法第8条で優良誤認(第5条第1号)と有利誤認(第5条第2号)に限って課されます。第5条第3号のステマ告示はこの列挙に含まれません。そのため単独では措置命令が処分の中心になります。
優良誤認・有利誤認を併発すると変わる点
| ケース | 該当条項 | 課徴金 |
|---|---|---|
| ステマ告示のみ | 第5条第3号 | 対象外(措置命令が中心) |
| 効果効能の優良誤認を併発 | 第5条第1号 | 対象売上額の3% |
- 口コミに「飲むだけで視力が回復」など効果効能の断定が加わると、第5条第1号に該当するおそれが高い
- 根拠資料を出せなければ不実証広告規制(第7条第2項)で優良誤認とみなされる
自社DBでは43件中、措置命令20件・課徴金納付命令11件(2026年9月時点)で、優良誤認は39件と最多類型です。ステマと優良誤認の併発が課徴金の分岐になります。両処分の重さがどう分かれるかを先に押さえてください。
措置命令でも失う信用と再発防止コスト
課徴金がなくても負担は残ります。措置命令では社名と違反事実の公表、再発防止措置の実施、取引先や販売店への通知対応が求められます。表示物の差し替えと社内フロー改修の実務コストも同時に発生します。
モニター投稿を自社サイトに載せるとき、どう書けばOKですか?
事業者が依頼・無償提供したモニター投稿を転用するなら、掲載箇所ごとに「PR」「提供」「モニター品」のいずれかを、消費者が投稿単位で認識できる位置に明示します。投稿者本人のInstagramに表示があっても、自社サイトに載せた時点で改めて識別情報を付ける必要があります。
NG掲載とOK掲載の対比
| NG掲載 | OK掲載 |
|---|---|
| 「from Instagram」のみ | 「※無償提供品を使用したモニター様のInstagram投稿より抜粋」を併記 |
| 「わたしも使っています」だけを引用 | 画像内に「#PR」+直近に「事業者の依頼による投稿」を明記 |
| ページ下部に一括で「一部PRを含む」 | 各投稿カードの直近に「モニター様のご投稿」を個別表示 |
画像内・直近テキストのどちらに入れるか
識別表示は画像内、または投稿の直近テキストに置きます。ページ下部の一括注記だけに頼ると、投稿単位での認識ができず不十分と判断される可能性が高くなります。
- 画像を差し替えられない場合は、画像のすぐ上または下に1行で識別文言を置く
- 「ユーザーの声」欄は、施策起因の投稿と自発的投稿を分け、前者にのみ識別表示を付ける
- 複数投稿を並べる場合は、各カードに個別表示する(下部注記の1か所では足りない)
景品表示法第5条第3号(2026年9月時点)が問うのは、事業者の表示であることを消費者が判別できるかどうかです。転用時の識別漏れは、健康食品広告で処分を避ける実務対応と合わせて点検してください。
モニター契約書に入れておく識別表示条項
委託先への指示漏れを防ぐため、契約書に2つの義務を明文化します。
- 投稿時の広告識別表示義務(「#PR」等を投稿本文に含める)
- 投稿が自社サイト・広告に転用される場合の追加識別義務
この2条項を入れておけば、2024年から2025年にかけて増えたUGC転用の指示漏れを、契約段階で1件ずつ潰せます。
同じ業種が今すぐ確認すべきステマ対策チェック項目は?
健康食品・サプリメントの事業者が最優先で点検すべきは、モニターやアンバサダーの投稿を自社サイト・広告素材へ転用する箇所です。転用先に識別表示が付いているかを、5項目で洗い出します。
転用前に確認する5項目
- モニター・アンバサダー・インフルエンサー投稿を転用する際、転用先にも「PR」「モニター提供品」等の識別表示を付けているか
- 「ユーザーの声」「Instagramより」欄に、施策起因の投稿が混在していないか全件確認したか
- UGC転用フローに、ステルスマーケティング告示の観点での法務レビューステップを設けているか
- モニター契約書・インフルエンサー契約書に、転用時の追加識別義務を明文化しているか
- 効果・効能を語る投稿を転用する場合、根拠資料をそろえる社内手続きを通したか
UGC転用フローに組み込む法務レビューゲート
転用前に広報・法務が識別表示の有無を確認するゲートを1か所設けます。運用は3ステップです。
- 転用候補を集約し、施策起因か自発投稿かを仕分ける
- 施策起因分に識別表示案を付け、法務が景品表示法第5条第3号(2026年9月時点で有効なステルスマーケティング告示)の観点で確認する
- 承認ログを残し、公開後も掲載箇所を月1回で棚卸しする
実務で見落としやすいポイント
| NG運用 | OK運用 |
|---|---|
| 投稿元にPR表示があるから転載先の識別表示は省略 | 転載先の画像内または直近に「※モニター提供品を使用したInstagram投稿より抜粋」を明記 |
| 「Instagramより」の一括表記で施策分を区別しない | 施策起因分だけ「#PR」「モニター様のご投稿」を個別付与 |
投稿元のPR表示を根拠に転載先の識別表示を省略するケースは、社内審査で差し戻し対象になりやすい典型です。2025年3月25日公表の措置命令でも、表示期間は令和6年6月4日から同年7月29日までの約2か月で処分に至りました。
よくある質問
投稿者のInstagram側に『PR』と書いてあれば、自社サイトに転載してもステマになりませんか?
投稿元にPR表示があっても、転載先の自社サイトが免責されるわけではありません。景品表示法上の判断は掲載箇所ごとに行われ、自社サイトに載せた時点で事業者の表示として、その箇所に識別表示が別途必要になるおそれが高い状況です。投稿画像にPRが写り込んでいても、サイト本文で広告と判別できなければ不十分と扱われます。転載する各ページで、事業者の関与を示す表示を明瞭に付けてください。
無償提供ではなく商品を購入してもらったモニターの投稿なら、識別表示は不要ですか?
対価の有無だけでは判断されません。事業者がその投稿を依頼・指示していれば、商品を購入してもらったモニターでも事業者の表示に当たり、識別表示が必要になるおそれが高いです。投稿内容や掲載を指示した、原稿を確認した、投稿を条件に特典を渡した場合は関与ありと見られます。購入モニターでも、依頼の記録が残る施策は識別表示を前提に設計してください。
アフィリエイターやインフルエンサーの投稿を引用する場合と、自社モニターの投稿を載せる場合で扱いは違いますか?
どちらも事業者の関与度で『事業者の表示』か否かが決まる点は共通です。事業者が投稿を依頼・指示し、内容に関与していれば、インフルエンサーでも自社モニターでも識別表示が必要になります。関与のない純粋な第三者の自主的な感想を引用する場合は対象外です。見分ける軸は投稿者の肩書ではなく、依頼・指示・対価・原稿確認といった関与の事実の有無です。
過去に転載した投稿にPR表示が抜けていました。今から直せば処分は避けられますか?
個別案件の適法・違法は断定できませんが、速やかな是正が実務上の基本対応です。表示の抜けた掲載箇所へ識別表示を追加し、転用フローに再発防止のレビュー工程を組み込み、対応の経緯を記録化します。是正の有無や時期は行政の判断要素になり得ます。最終的な処分の可否は所管行政・専門家の判断となるため、掲載実態を整理したうえで相談してください。
『#PR』とだけ書けば識別表示として十分ですか?
『#PR』の一語だけでは不十分になる場合があります。基準は、消費者が投稿単位で広告と認識できる明瞭さです。多数のハッシュタグに埋もれる位置や、文末に小さく置く形は判別しにくいと扱われます。投稿の冒頭など目に入る位置へ、『PR』『広告』『提供:事業者名』と明瞭な文言で示してください。位置と文言の両面で、広告と分かる状態を確保します。
まとめ
施行後の健康食品ステマ処分で繰り返し問われたのは、モニター投稿を識別表示なく自社サイトへ転用した掲載箇所です。まず自社サイト・LP・商品ページで、モニターやUGCを載せている箇所を洗い出してください。次に各箇所へ『PR』『広告』が投稿単位で明瞭に付いているかを、位置と文言の両面で確認します。判断の軸は対価の有無ではなく、事業者が投稿を依頼・指示したかどうかです。関与のある投稿は、識別表示を前提に扱います。転用フローには、掲載前の景表法レビュー工程と、依頼・指示の記録化を組み込みます。ステマ告示単独は課徴金の対象外ですが、効果や体験の強調で優良誤認を併発すると、対象売上の3%の課徴金が加わります。表示の抜けを見つけた箇所から是正し、再発防止措置と記録を整えてください。
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監修は、薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)の資格を持ち、健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当する広告審査の実務者が務めています。(2026年9月時点の情報です)
