措置命令は再発防止などを命じる行政処分、課徴金納付命令は不当表示で得た売上の一部を国に納めさせる金銭的処分で、狙いも根拠条文も金額も別です。景品表示法では措置命令が第7条、課徴金納付命令が第8条に定められています。課徴金とは、優良誤認表示などをした期間の対象商品の売上額に3%を掛けて算定し、事業者に納付を命じる金銭的な処分のことです。健康食品広告では、痩身・血圧・免疫などの効果を断定した表示が優良誤認と認定され、両処分の対象になっています。自社の表現がどちらの段階にあたるかは、金額と処分の順番の違いから切り分けられます(2026年9月時点)。
措置命令と課徴金の違いをひと目で言うと?
措置命令は「誤認をやめさせ再発を防ぐ命令」、課徴金納付命令は「違反売上の3%を国に納めさせる金銭処分」です。前者は表示の是正、後者は経済的な回収を目的とし、根拠条文も分かれます(2026年9月時点)。
| 項目 | 措置命令 | 課徴金納付命令 |
|---|---|---|
| 目的 | 誤認排除・再発防止 | 違反売上の回収 |
| 根拠 | 景品表示法第7条 | 景品表示法第8条 |
| 金銭負担 | なし | 対象売上額の3% |
措置命令=誤認排除と再発防止の命令
措置命令とは、景品表示法第7条に基づき、違反表示の差止め・再発防止・周知徹底を命じる行政処分のことです。金銭の徴収は含まず、表示そのものを正すことを狙います。
課徴金=違反売上3%の納付命令
課徴金納付命令は、景品表示法第8条に基づき、対象売上額の3%(同条第1項)の納付を命じる処分です。命令の目的は、違反表示で得た売上の回収にあります。
同じ事案で両方科されることがある
一つの広告に両方が及びます。判断の入口は次の2点です。
- 表示是正だけで済むか、売上規模が課徴金の対象になるか
- 根拠資料を出せるか(不実証だと優良誤認と評価されやすい)
2026年6月29日の措置命令(健康食品・サプリ通販)では、根拠を欠く『SNSでも大人気!』の表示が問題となりました。こうした通販広告で実際に問われた表現を自社の文言と照らすと、リスク段階の見当がつきます。
措置命令とは?健康食品広告で命じられる内容
措置命令とは、景品表示法第7条に基づき消費者庁または都道府県知事が不当表示の差止め・再発防止等を命じる行政処分のことです。金銭を課す処分ではなく、表示をやめさせ、消費者の誤認を解く行政上の命令です(2026年9月時点)。
措置命令の対象になる表現
対象は、実際より著しく優良と見せる優良誤認表示です。景品表示法第5条第1号に該当するおそれが高い表現が命令の入口になります。
2026年3月25日の措置命令では、健康食品の広告で次の表現が問題視されました。
| NG表現(認定例) | 何が問われたか |
|---|---|
| 誰でも食事制限や運動をすることなく、短期間で容易に顕著な腹部の痩身効果 | 効果の著しい優良誤認 |
| 米国のダイエット部門で人気第1位 | 根拠のない最上級表示 |
痩身効果や措置命令の基礎知識を押さえると、対象になる表現の線引きが見えます。
命令で事業者がやらされること
命令書では、主に4項目が命じられます。金銭より重いのは、周知と再発防止の負担です。
- 対象表示の差止め(掲載を直ちにやめる)
- 誤認排除の周知(一般消費者へ訂正を告知する)
- 再発防止策の構築(社内体制の整備)
- 同様の表示を将来行わない不作為の徹底
周知は自社サイトや新聞で行うため、ブランド毀損の影響が課徴金より長引く例があります。
都道府県も出せる
措置命令は消費者庁だけの権限ではありません。景品表示法第7条により、都道府県知事も同じ命令を出せます(2026年9月時点)。所在地の都道府県から命令が出る事案もあり、通販は販売地域が広いほど複数行政の目に触れます。
課徴金とは?健康食品広告でいくら取られるのか
課徴金とは、景品表示法第8条に基づき、不当表示で得た商品の売上額の3%を国に納付させる行政処分のことです(2026年9月時点)。対象期間は最長3年で、売上額に固定の3%を掛ける単純な仕組みです。
課徴金の算定式(売上×3%)
算定式は「対象商品の売上額 × 3%」です。対象期間は不当表示をした期間を基準に、最長3年間さかのぼります(景品表示法第8条第1項ただし書・第2項、2026年9月時点)。
仮に対象売上額を8,000万円とした算定例を示します。
| 対象売上額 | 課徴金率 | 課徴金額 |
|---|---|---|
| 8,000万円 | 3% | 240万円 |
| 1億円 | 3% | 300万円 |
売上額が大きいほど、納付額はそのまま比例して増えます。期間の取り方は売上と対象期間から金額を試算する手順で確認できます。
課徴金が出ない150万円未満ライン
課徴金額が150万円未満になる場合、課徴金納付命令は出ません(景品表示法第8条第1項ただし書、2026年9月時点)。
- 課徴金額150万円未満が不課徴のライン
- 3%で150万円に達する売上額は5,000万円
- 対象売上5,000万円未満が不課徴の目安
売上が少額でも措置命令は別に出ます。不課徴は「処分なし」を意味しません。
自主報告2分の1・返金措置の減額
自主的な報告や返金で、納付額が下がります。
- 違反を自ら消費者庁へ報告すると課徴金額が2分の1に減額(景品表示法第9条)
- 購入者へ返金措置を実施すると、返金相当額が課徴金額から控除(同法第10条〜第11条)
report・返金の記録は減額の前提になります。売上台帳と返金履歴を処分前に整理しておくと、控除の主張がしやすくなります。
措置命令と課徴金の違いを比較表で整理
措置命令は景品表示法第7条にもとづき違反表示の差止めと再発防止を命じる行政処分で、金額はありません。課徴金納付命令は第8条にもとづき、対象期間の売上額に一定率を掛けた金銭を国に納めさせる処分です(2026年9月時点)。
目的・根拠・主体の違い
| 項目 | 措置命令 | 課徴金納付命令 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 景品表示法第7条 | 景品表示法第8条 |
| 処分主体 | 消費者庁・都道府県 | 消費者庁 |
| 目的 | 表示の差止め・再発防止 | 不当な利得の剥奪 |
| 金額 | なし | あり(売上額の一定率) |
| 再発防止措置 | あり(周知・体制整備) | なし |
- 措置命令は「これ以上出させない」ための処分で、社内周知や再発防止体制の整備まで命じられます。
- 課徴金納付命令は「稼いだ分を返させる」ための処分で、金銭の納付が中心です。
金額と対象期間の違い
課徴金の基準率は対象商品・役務の売上額の3%です(景品表示法第8条第1項)。対象期間は不当表示をした期間で、最長で3年分がさかのぼって算定されます。売上額5,000万円なら150万円が目安です。
- 売上額が5,000万円未満なら課徴金は課されません(同条第1項ただし書)。
- 課徴金額が150万円未満となる場合も課されません。
2024年改正で加わった直罰と割増
令和5年改正景品表示法(2024年10月1日施行)で、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への課徴金が1.5倍となり、基準率は4.5%に上がりました(景品表示法第8条第4項)。同改正では、優良誤認・有利誤認表示への直罰として100万円以下の罰金も新設されています(同法第48条)。売上額5,000万円で割増が適用されると、課徴金は225万円まで増えます。
措置命令と課徴金はどちらが先に出る?両方来るのか
原則として措置命令が先に発出され、その後に課徴金納付命令が別途出されます。両方が同時に来ることはなく、時間差があります。ただし違反の程度によっては、行政指導・改善指導で止まり、どちらの処分にも至らない事案もあります。
原則は措置命令が先
景品表示法(2026年9月時点)では、違反表示に対しまず措置命令(第7条)で表示の停止と再発防止を命じます。課徴金納付命令(第8条)は、その後に金額を算定して出す流れが一般的です。
- 措置命令:表示の差止めと再発防止が目的
- 課徴金納付命令:不当な売上分の金銭的な吐き出しが目的
根拠を欠く効果表示は根拠資料の提出を求められる規制とあわせて問われます。
課徴金は後から別途出る
課徴金納付命令には、発出前に弁明の機会が付与されます(景品表示法第13条、行政手続法との関係、2026年9月時点)。事業者は算定期間や売上額について意見を述べられます。
| 論点 | 措置命令 | 課徴金納付命令 |
|---|---|---|
| 出る順番 | 先 | 後 |
| 事前手続 | 通常なし | 弁明の機会あり |
| 内容 | 是正の命令 | 金銭の納付 |
措置命令だけで課徴金が出ない事案もあれば、両方が科される事案もあります。自社データベース(2010年4月1日〜2026年6月29日、43件)でも措置命令20件・課徴金納付命令11件と件数が分かれます。
行政指導で止まる場合との違い
処分に至らず行政指導・改善指導にとどまる事案もあります。2026年3月23日の事例では、NG表現として「疲労回復」「免疫力アップ」「頭髪の悩みを根本から改善する」が挙げられ、改善指導の段階で対応が求められました。命令ではないため、課徴金の算定には進みません。
自社の健康食品広告はどちらのリスク?見分け方
自社広告のリスク段階は、表現の内容で切り分けられます。数値化した効果や順位表示は課徴金まで及びやすく、根拠資料を出せない表現は不実証で崩れます。自社DB(2010年4月〜2026年6月、景表法×健康食品43件)でも措置命令20件・課徴金納付命令11件、優良誤認39件・不実証広告規制27件・No.1表示9件と、この2類型に集中しています。
課徴金まで及びやすい表現
売上と直結する断定的な効果訴求は、課徴金納付命令まで発展しやすい類型です。2025年6月30日の課徴金納付命令では、次の表現が違反と認定されました。
- 「3週間で60.8kg→47.2kg」(数値で痩身効果を断定)
- 「ダイエットサプリ No.1」(客観的根拠のない順位表示)
- 「一番継続しやすい」(最上級の断定)
痩身・血圧・No.1・体験談は、社内審査でまず優先的に見直す4類型です。
根拠不提出(不実証)で崩れる型
効果をうたいながら裏づけ資料を出せない表現は、不実証広告規制で崩れます。景品表示法第7条第2項(2026年9月時点)に基づき、消費者庁の求めに対し原則15日以内に合理的な根拠資料の提出が必要です。提出できない場合、優良誤認表示とみなされます。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 飲むだけで脂肪を燃焼 | 食事管理と組み合わせた摂取例を紹介 |
| 血圧を下げる | (届出範囲内の機能性表示に限定して記載) |
| 医師も推奨 | 監修者の資格と関与範囲を明記 |
審査で差し戻されやすい見落とし
No.1・最上級・体験談は、社内チェックで差し戻しが多発する頻出類型です。実務では次の見落としが繰り返し起きます。
- No.1表示に調査出典・期間・範囲を添えていない
- 体験談を効能効果の暗示として使っている
- 打消し表示が本文より小さく、実質的に読めない
該当する表現があれば、表現ごとの直し方をまとめた対策記事で優先順位を確認してください。
よくある質問
行政指導と措置命令はどう違いますか?
行政指導は法的強制力のない改善要請で、公表や命令に至らない事前段階です。表現の手直しを求められても、処分歴としては残りません。措置命令は景品表示法第7条に基づく行政処分で、再発防止や差止め、公表が命じられます。従わなければ罰則の対象にもなります。健康食品広告では、行政指導で是正されないまま表示が続くと措置命令へ進む流れがあります。段階が一つ上がると、公表による信用低下が生じます。
機能性表示食品なら課徴金の対象外ですか?
対象外ではありません。届出制であっても、広告表現が届出の範囲を超えて効果を強調し、景品表示法上の優良誤認に該当すれば課徴金の対象になりえます。届出をした事実は、表示の適正さを保証しません。血圧サプリをめぐる課徴金の事例は関連記事で整理しています。確認すべきは、届出内容と実際の広告表現がずれていないかです。逸脱が優良誤認と認定される点は、通常の健康食品と変わりません。
自主的に違反を申告すると課徴金は減りますか?
減額される場合があります。景品表示法第9条に基づき、違反を自ら国に報告すれば課徴金額が2分の1に減額されます。さらに、購入者への返金措置を実施して要件を満たせば、その分が課徴金額から控除されます。調査着手後の報告は減額の対象外です。減額を見込むより、表示段階で優良誤認を作らない管理が先に立ちます。自主報告は最後の手段と位置づけます。
代理店やアフィリエイターが作った表現でも自社が処分されますか?
処分される場合があります。表示の内容を決定した「表示主体」と判断されれば、制作を外注していても広告主が措置命令や課徴金の対象になります。景品表示法は表示をした事業者を規律の対象とするためです。代理店やアフィリエイターに任せきりでも、責任が移るわけではありません。委託先の原稿を自社基準でチェックする体制が要ります。表示主体の考え方は関連記事で解説しています。
課徴金の「対象期間」はいつからいつまでですか?
不当表示をしていた期間が対象で、最長3年分の売上が算定基礎になります。景品表示法第8条に基づき、表示を始めた日から取りやめた日までが原則です。取りやめ後も、一般消費者への誤認が残る期間は加算される場合があります。対象期間の売上額に3%を掛けた金額が課徴金です。長く表示を続けたほど算定基礎が膨らみます。表示の開始日と終了日を記録しておくことが重要です。
まとめ
自社の健康食品広告のリスクを切り分けるには、まず表現が優良誤認・有利誤認に当たるかを確認します。効果効能を断定した表示は措置命令の対象になり、そこで得た売上が大きいと課徴金納付命令まで及びます。景品表示法第7条が措置命令、第8条が課徴金、第9条が自主報告による減額の根拠です。見直しの優先順位は、断定的な効果表示と体験談の是正が先、次に対象商品の売上規模と表示期間の把握です。売上が大きく表示期間が長い主力商品ほど、課徴金の算定基礎が膨らみます。表示の開始日と終了日、根拠資料を商品ごとに記録しておくと、処分段階の判定と自主対応の判断が速くなります。まず主力商品の広告文言を第7条・第8条の観点で棚卸しし、優良誤認の芽を先に潰します。
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