健康食品の体験談で「-43kg」と示した広告に、消費者庁が課徴金1771万円の納付命令を出しました。認定の根拠は景品表示法第5条第1号の優良誤認です。体験談広告とは、利用者の感想やビフォーアフター画像を使い、商品の効果を示す広告のことです。「個人の感想です」の注記や「適度な運動と食事制限を取り入れた結果」という打消し表示があっても、主表示が著しい痩身効果を暗示すれば優良誤認に該当します。措置命令と課徴金は併課され、課徴金は対象売上額の3%で算定されます。表示媒体は商品に同梱した冊子で、紙媒体も景表法の対象です。

「体験談で-43kg」の広告に課徴金1771万円が出た事例とは?

2024年3月6日、消費者庁がA社(健康食品・サプリメント・通販/EC)に対し、景品表示法第8条第1項に基づく課徴金納付命令を発出した事例です(2026年9月時点)。課徴金額は1771万円、違反行為期間は平成30年4月3日から令和元年6月24日までとされました。

処分の概要と課徴金額

  • 処分:課徴金納付命令(優良誤認表示・不実証広告規制)
  • 根拠:景品表示法(不当景品類及び不当景品表示法)第8条第1項
  • 課徴金額:1771万円
  • 違反行為期間:平成30年4月3日〜令和元年6月24日(約1年3か月)
  • 出典:消費者庁の公表資料

「2年半で-43kg」といった体験談ビフォーアフターで著しい痩身効果を標ぼうしましたが、提出資料は合理的根拠と認められませんでした。

対象になった媒体と業種

対象媒体は、商品同梱冊子です。Webやテレビだけでなく、紙のオフライン媒体も景品表示法の規制対象になる前提を最初に置きます。

項目本件の内容
媒体商品同梱冊子(オフライン)
商材食品(いわゆる健康食品)
訴求痩身効果・体重減少数値

同梱冊子・DMは審査から漏れやすく、社内チェックでも見落としが多い媒体です。

自社DBでの位置づけ

景品表示法×健康食品の行政処分・注意喚起を集計した自社データベース43件(2010年4月1日〜2026年6月29日)のうち、課徴金納付命令は11件です。本件はその1件にあたります。過去の健康食品広告で処分された他の類型と照合すると、体験談+数値の訴求が課徴金に直結した典型例として位置づけられます。

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違反と認定された表現は具体的にどれか?

消費者庁が優良誤認と認定したのは、体験談・具体的な体重数値・ビフォーアフター・最上級表示の4類型です。同梱冊子という紙媒体に、これらが同時に掲載されていました。自社DB43件のうち、体験談による効能の暗示は8件で確認された類型です。

体験談・数値による訴求

摂取行為だけで痩せたと読める文言が認定されました。

  • 「2年半で-43kg!! その方法を公開中!」
  • 「少しずつだけど、確実に変化が! 無理な食事制限や激しい運動もしてないのに、ここまで違うなんて。」
  • 「ビクともしなかった体重が落ちてる!」
  • 「あれ!あんなにきつかったのにすんなり入る!」

「飲むだけ」を示唆する言い回しと、-43kgという数値の組み合わせが問題視されました。過去の同種処分でも同じ構図が繰り返されています。

ビフォーアフターの提示

数値の落差を視覚化した表示です。

  • 「96kg▸53kg -43kg減」
  • 「ここから2年で-34kg!」
  • 「もう一度、あの頃のスリムな私に!」

96kgから53kgへの43kg減という具体的な数字が、商品を使えば平均的に得られる効果と読まれました。

最上級・No.1系の表現

  • 「日本一※売れている中年太りサポート茶」

「日本一」に付した「※」の注記は、第三者機関による客観的な調査根拠を明示していませんでした。景品表示法第5条第1号(優良誤認表示、2026年9月時点)の対象です。

なぜ体験談とビフォーアフターが優良誤認になるのか?

体験談とビフォーアフターに「-43kg」などの数値が加わると、摂取するだけで著しい痩身効果が得られると消費者に伝わります。食品にその裏付けがなければ、景品表示法第5条第1号の優良誤認表示に該当します。

景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)

景品表示法第5条第1号(2026年9月時点)は、商品の内容について実際よりも著しく優良と誤認させる表示を禁じます。本件の「2年半で-43kg」「96kg▸53kg」「無理な食事制限や激しい運動もしてないのに」は、飲むだけで大幅な減量ができる印象を与えます。食品にこの効果の合理的根拠がなければ、優良誤認と評価されます。

NG(著しい効果の暗示)評価される理由
2年半で-43kg!!具体数値が確実な減量効果を示す
運動もしてないのにここまで違う摂取のみで効果が出ると誤認させる

景品表示法第7条第2項の不実証広告規制と根拠提出

著しい効果を標ぼうすると、消費者庁は景品表示法第7条第2項(不実証広告規制、2026年9月時点)に基づき、事業者へ合理的根拠資料の提出を求めます。原則15日以内に提出できなければ、その表示は優良誤認表示とみなされます。本件で提出された資料は合理的根拠を示すものと認められず、課徴金納付命令につながりました。根拠資料の考え方はこちらで整理しています。

根拠は掲載前に取得・保管が必要

15日以内に提出できる根拠は、事後に急いで用意できるものではありません。判断基準は次の3点です。

  • ヒト試験データなどの根拠を広告掲載前に取得しておく
  • 事後に作成した資料は合理的根拠と認められないリスクがある
  • 根拠資料は15日以内に提出できる形で保管する

自社データベース(2010年4月〜2026年6月の43件)では、不実証広告規制(根拠不提出)が27件、優良誤認(効果・性能)が39件を占めます。数値付き体験談は、この2類型に同時に該当します。

「適度な運動と食事制限を取り入れた結果」の打消し表示はなぜ無効だったのか?

打消し表示が無効になったのは、主表示から受ける「飲むだけで-43kg」という印象を、その注記が打ち消すものではないと消費者庁が判断したためです。免責文言は書けば効くのではなく、主表示と同等以上に読まれる形でなければ意味を持ちません。

主表示と打消し表示の関係

主表示は消費者が最初に強く受け取る情報で、打消し表示はその印象を修正する注記です。本件では「2年半で-43kg!!」が主表示、「適度な運動と食事制限を取り入れた結果」が打消し表示に当たります。後者は主表示の印象を打ち消すものではないと判断されました。

  • 主表示:大きな文字・写真・数値で最初に目に入る
  • 打消し表示:小さな注記で主表示の効果を限定する

視認性の判断基準(文字サイズ・配置・色)

判断の軸は文字サイズ・配置・色コントラストの3点です。消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(2026年9月時点)を根拠に、次の水準が求められます。

  • 文字サイズ:主表示と同等以上。極端に小さい注記は無効
  • 配置:主表示の近くに置き、離れた欄外は不可
  • 色コントラスト:背景と明確に区別でき、視認できる

「個人の感想です」でも免責されない条件

「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」も、条件を満たさなければ免責されません。自社データベースでは打消し表示の不備が4件あり、注記があっても優良誤認と認定された事例が含まれます。

無効になる注記有効に近づける条件
欄外に小さく「個人の感想です」主表示と同等サイズで隣接配置
背景に埋もれる薄い色の免責文背景と区別できる色コントラスト
数値の主張を残したまま注記主表示の断定表現自体を見直す

上限は景品表示法第8条第1項(2026年9月時点)に基づく課徴金です。注記の追加ではなく主表示の見直しが必須対応となります。

痩身効果はどう書けば通るのか?(NG/OK対比)

食品で痩身効果を訴求するなら、体験談・数値・No.1をやめ、成分や原料の説明にとどめます。「2年半で-43kg」のような結果表現は、景品表示法第5条第1号(2026年9月時点)の優良誤認に該当するおそれが高く、飲用行為のみで痩せると読める表現も避けます。

NG表現とOK言い換えの対比表

NG表現(本件で認定)OK言い換え
2年半で-43kg!!毎日の食生活に取り入れやすいお茶です
無理な食事制限や激しい運動もしてないのに食後に無理なく続けられます
96kg▸53kg -43kg減○○(原料)を配合しています
日本一※売れている中年太りサポート茶おいしく飲める健康茶

効果・効能ではなく「おいしく飲める」「毎日の食生活に」といった成分・原料の説明に軸を移します。健康食品では誇大表示の線引きとあわせて確認します。

体験談を残す場合の必須注記

  • 「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」を明記する
  • 注記は主表示と同等以上の文字サイズ・配置で表示する
  • ○kg減など具体的な数値、ビフォーアフター画像は使わない
  • 「飲むだけ」「これだけで」など摂取行為のみで効果が出る表現は削る

No.1・日本一表示に必要な調査根拠

  • 第三者機関による客観的な調査に基づくこと
  • 調査対象・時期・出典を表示に明示すること
  • 根拠は広告掲載前に取得・保管しておくこと

No.1・最上級表示は自社データベースで9件確認された類型です。根拠を示せない「日本一」「No.1」は、景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高く、事後提出では認められないリスクがあります。

同じ業種が今すぐ確認すべきチェック項目は?

食品・健康食品で痩身を訴求するなら、確認すべきは3点です。表現に数値効果が入っていないか、根拠資料を掲載前に保管しているか、オフライン媒体まで審査対象に含めているか。本件(課徴金1771万円)の争点をそのまま自社の点検項目に置き換えます。

表現面のチェック項目

  • ビフォーアフター画像に「-43kg」「96kg▸53kg」など具体的な体重減少数値を載せていないか
  • 「無理な食事制限や激しい運動もしてないのに」など、摂取だけで効果が出るかのような表現を使っていないか
  • 「日本一」「No.1」に第三者機関の調査根拠を明示しているか
  • 打消し表示が主表示と同等以上の文字サイズ・配置・色コントラストで表示されているか

打消し表示は、主表示から受ける印象を打ち消せなければ景品表示法第5条第1号(2026年9月時点)の優良誤認を免れません。

NG表現OK言い換え
2年で-34kg!すんなり入る食物繊維を配合した健康茶です
飲むだけで中年太りに毎日の食生活のバランスに

根拠・保管のチェック項目

  • 効果を裏付ける合理的根拠資料(ヒト試験データ等)を広告掲載前に取得し保管しているか
  • その資料が景品表示法第7条第2項(不実証広告規制)の求める客観性を満たすか

本件では提出資料が合理的根拠と認められませんでした。事後提出では認められないリスクがあり、掲載前の取得が前提です。

審査フローとオフライン媒体の扱い

  • 同梱冊子・DM・チラシなどオフライン媒体を含む全表示媒体を審査対象にしているか
  • 広告制作段階でエビデンス確認と法務チェックを必須工程として組み込んでいるか

本件の対象は商品同梱冊子でした。Web広告だけを審査してオフラインを外す運用は、違反行為期間(平成30年4月3日〜令和元年6月24日)と同じ穴を残します。項目の背景は健康食品広告の違反を防ぐ対策の記事にまとめています。

よくある質問

「個人の感想です」と書けば体験談で○kg減を載せてよいですか?

注記だけでは免責されません。主表示が「-43kg」のように著しい痩身効果を暗示していれば、景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高いです。「個人の感想です」は打消し表示にあたりますが、主表示と同等以上の視認性がなければ効果を打ち消せません。文字サイズ・配置・色コントラストを含めて総合判断されます。数値を示す体験談そのものを見直す必要があります。

機能性表示食品なら体重減少の体験談やビフォーアフターを使えますか?

届出範囲を超える痩身の暗示は、機能性表示食品でも景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当し得ます。届け出た機能性の文言と、体験談やビフォーアフターが示す効果がずれれば問題です。体重減少を届け出ていない商品で「-○kg」を載せれば、届出の有無にかかわらずリスクが残ります。血圧など他成分でも課徴金事例があり、成分ごとに分けて確認します。

同梱冊子やDM、紙媒体も景品表示法の対象になりますか?

対象になります。この事例は商品に同梱した冊子での表示が問題になりました。景品表示法は媒体を限定していないため、Web・LP・チラシ・DM・同梱冊子・パッケージのすべてが対象です。紙だから審査不要という扱いはできません。全媒体で同じ基準の表現チェックが必要です。同梱物は制作後に見落とされやすく、社内審査から外れがちな点に注意します。

打消し表示は文字サイズをどのくらいにすれば有効になりますか?

一律の数値基準はありません。有効性は主表示と同等以上の視認性で判断され、文字サイズ・配置・色コントラスト・背景との関係を含めて総合的に評価されます。主表示が大きな「-43kg」で、打消しが小さく離れた位置にあれば免責されません。サイズを上げれば足りるとは限らず、主表示の効果暗示そのものを弱めることが先です。最終判断は所管行政・専門家に確認します。

本当の顧客から集めた体験談でも違反になりますか?

事実の体験談でも違反になり得ます。景品表示法第5条第1号は、表示が著しい効果を暗示し、それを裏づける合理的根拠がなければ優良誤認と評価します。体験談が本物かどうかと、表示が適法かどうかは別問題です。実在の顧客の声でも、商品の効果として「-○kg」を示せばリスクが残ります。根拠資料の有無と主表示の暗示度で判断します。

まとめ

自社の体験談・ビフォーアフター・「-○kg」表現を、今の主表示のまま使えるか点検してください。判断の軸は3つです。第一に、主表示が著しい痩身効果を暗示していないか。第二に、「個人の感想です」や運動・食事制限の併用といった打消し表示が、主表示と同等以上の視認性を持つか。第三に、Web・LP・DM・同梱冊子・パッケージまで全媒体を審査対象にできているか。体験談+数値で効果を訴える表現は、景品表示法第5条第1号の優良誤認に該当するおそれが高く、課徴金は対象売上額の3%で算定されます。差し替えの方向は、体験の数値から成分・原料の説明へ移すことです。配合成分の量や働きの事実に基づく記述へ書き換え、効果の断定を避けます。最終判断は所管行政・専門家に確認してください。

出典:消費者庁の公表資料(2024-03-06)

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監修:薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)の資格を持ち、健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当する広告審査の実務者。(2026年9月時点の情報です)