血圧の機能性表示食品でも、届出表示の範囲を超える広告を出せば課徴金の対象になります。A社(機能性表示食品)は、血圧関連の広告表示をめぐり課徴金1億903万円の納付命令を受けました(消費者庁公表資料、2026年9月時点)。機能性を届け出済みでも免責にはなりません。不実証広告規制とは、優良誤認のおそれがある表示について、事業者が期限内に合理的根拠資料を提出できなければ不当表示とみなす規制のことです(景品表示法第7条第2項・第8条第3項)。認定された8表現と届出表示の対比、課徴金3%の算定、血圧特有のNG/OK言い換え、6項目の自己点検で、自社広告の可否を自分で切り分けられます。
血圧の機能性表示食品でも課徴金は出るのか
機能性表示食品でも課徴金は出ます。2025年3月19日、消費者庁は血圧・LDLコレステロール・中性脂肪を訴求した機能性表示食品2商品について、景品表示法第8条第1項(2026年9月時点)に基づき課徴金1億903万円の納付を命じました。届出済みという事実は、広告表現の適法性を保証しません。
対象となった処分の概要(2025年3月・消費者庁)
処分の骨格は次の6点です。
- 公表日:2025年3月19日
- 公表元:消費者庁(一次情報は同庁の課徴金納付命令の公表資料)
- 処分:課徴金納付命令
- 課徴金額:1億903万円
- 根拠:景品表示法第8条第1項(不実証広告規制、2026年9月時点)
- 対象:機能性表示食品2商品
表示媒体は自社ウェブサイト・冊子・容器包装の3経路です。血圧低下・LDLコレステロール減少・中性脂肪低下の効果があるかのように表示した点が問題視されました。消費者庁が合理的根拠資料の提出を求めたところ、提出資料は表示の裏付けと認められませんでした。類似の構図は他の健康食品でも繰り返されており、過去の摘発パターンの整理と合わせて確認する価値があります。
機能性表示食品とは何を届け出た食品か
機能性表示食品とは、事業者の責任で科学的根拠に基づいた機能性を消費者庁に届け出た食品のことです。届け出るのは「届出表示」という特定の一文であり、効果効能を無制限に広告できる許可ではありません。
| 誤解しやすい前提 | 実際の扱い |
|---|---|
| 届出済み=広告は自由 | 広告できるのは届出表示の範囲内のみ |
| 機能性取得=効果を断定できる | 断定・強調表現は優良誤認になりうる |
届出表示の範囲を1文字でも超えると、その超過部分は根拠のない表示として景品表示法第8条第1項の対象になります。本事例の課徴金1億903万円は、この逸脱が金額に直結することを示しています。
違反と認定された血圧サプリの表現はどれか
消費者庁が2025年3月19日に公表した課徴金納付命令では、A社(機能性表示食品・特保)の血圧サプリについて8つの表現が優良誤認と認定されました。届出表示から離れた「定量・断定型」「複合訴求型」「機能性取得を装う型」の3系統に整理できます。
認定された8つの表現
認定8表現は、次の3系統に仕分けできます。
- 定量・断定型:「高めの血圧を下げる機能性サプリ」「血圧をグーンと下げる」「血圧を徹底的に下げる!」
- 複合訴求型:「コレステロール×血圧×中性脂肪を同時にケアできるのは日本初※」「高めの血圧、コレステロール、中性脂肪に同時に対策!」
- 機能性取得を装う型:「血圧を下げる機能性取得○」「酸化LDLコレステロールを減少させる機能性取得○」「中性脂肪を低下させる機能性取得○」
危ういのは3系統目です。届け出た機能を「機能性取得○」と広告の根拠に転用し、届出範囲を超えた断定的訴求の裏づけに見せています。届出表示は効果の保証ではありません。同様の構図は効果を実体験として語らせる手法の違反例でも繰り返されています。
届出表示と広告表現のズレを対比表で見る
届出表示は「血圧が高めの方に適する」といった限定的な機能です。広告の断定表現との距離が、逸脱箇所になります。
| 広告で使われた表現(NG) | 届出表示に沿う方向(OK) |
|---|---|
| 血圧をグーンと下げる | 血圧が高めの方に適した機能があると報告されている |
| 血圧を徹底的に下げる! | 高めの血圧を下げる機能が報告されている(届出の範囲内で表記) |
| 同時にケアできるのは日本初※ | 各成分の届出機能を個別に、複合効果は訴求しない |
「下げる」という断定と「日本初」という最上級が、届出資料の結論を超えた点が問題です。景品表示法第5条第1号(優良誤認、2026年9月時点)に該当します。
機能性を取得していてもなぜ違反になったのか
機能性表示食品の届出は、特定の限定的な機能を消費者庁に届け出た事実にすぎません。届出範囲を超えた効果を広告で断定・強調し、その裏付け資料が合理的根拠と認められなければ、景品表示法第8条第1項の不実証広告規制に抵触します。届出は違反を免責しません。
不実証広告規制とは何か
不実証広告規制とは、効果・性能の表示について、消費者庁が事業者に合理的根拠資料の提出を求められる仕組みのことです(景品表示法第8条第3項、2026年9月時点)。
本事例では、消費者庁が同項に基づき血圧低下・LDLコレステロール減少・中性脂肪低下の裏付け資料の提出を求めました。事業者は資料を提出しましたが、いずれも表示を裏付ける合理的根拠を示すものと認められませんでした。この時点で表示は優良誤認表示(景品表示法第5条第1号)とみなされ、課徴金1億903万円の対象になりました。
判断の分岐は次の3点です。
- 提出期限は原則15日以内。この期間に資料を用意できるか
- 資料が届出のシステマティックレビューの結論と1対1で対応しているか
- 複数成分の「同時ケア」を示す複合効果の根拠が別途あるか
健康食品広告での資料要求の実務は根拠資料を求められたときの対応で整理しています。
届出表示の範囲を超えるとは具体的にどういう状態か
届出表示の範囲を超えるとは、「高めの血圧が気になる方に適する」といった限定的な届出機能を、広告で断定・数値化・強調して別物の効能に置き換えた状態を指します。機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(2026年9月時点)でも、広告は届出表示の範囲内に限られます。
| 届出表示(範囲内) | 広告での逸脱表現 |
|---|---|
| 高めの血圧が気になる方に適する | 血圧をグーンと下げる/徹底的に下げる |
| LDLコレステロールの減少をサポート | 血圧・コレステロール・中性脂肪を同時に対策 |
限定表現を断定・最上級に書き換えた8つの表現が、範囲逸脱として認定されました。
課徴金1億903万円はどう算定されたのか
課徴金は、違反表示によって得た対象期間の売上額の3%で算定されます(景品表示法第8条第1項、2026年9月時点)。本事例では自社ウェブサイト・冊子・容器包装での表示期間の売上を基礎に、1億903万円の納付が命じられました。
課徴金は売上額の何%で決まるか
課徴金額は、次の計算式で決まります。
- 課徴金額 = 対象期間の売上額 × 3%(景品表示法第8条第1項)
- 対象期間 = 違反表示を開始した日から取りやめた日まで(最大3年)
本事例の1億903万円から逆算すると、対象となった売上規模はおよそ36億円に達します。3%という料率でも、母数が大きければ課徴金は億単位に膨らみます。算定の詳細は3%の計算方法を整理した解説で確認できます。
掲出期間が長いほど額が膨らむ理由
対象期間は違反表示の掲出開始日から取りやめ日までで区切られます。掲出が長引くほど対象期間の売上が積み上がり、その3%である課徴金も比例して増えます。
即時修正と証拠保全には、金額面の実利があります。
| 対応 | 実務上の効果 |
|---|---|
| 問題表示を発見後すぐ削除 | 対象期間が短縮され、算定基礎の売上が減る |
| 修正日時と旧表示を保全 | 取りやめ日を客観的に立証でき、期間の争いを防ぐ |
消費者庁の調査着手を待たず自主的に是正した期間は、課徴金の算定基礎から外れる余地があります。表示の見直しを1日先送りするごとに、その日の売上の3%が積み上がる構造だと捉えてください。
血圧サプリのNG表現とOK言い換えはどう書き分けるか
分かれ目は、届出表示の範囲内かどうかです。「下げる」と断定する表現は届出を超えるとみなされやすく、「気になる方に」と対象者に語りかける形へ寄せると範囲内に収まりやすくなります。本事例で認定された8表現も、断定と複合訴求が中心でした。
血圧・中性脂肪・コレステロール別のNG/OK対比
| 機能 | NG表現 | OK方向(届出表示の範囲で) |
|---|---|---|
| 血圧 | 血圧をグーンと下げる | 高めの血圧が気になる方に |
| 血圧 | 血圧を徹底的に下げる! | 高めの血圧をサポートする機能があると報告されています |
| コレステロール | 酸化LDLコレステロールを減少させる | 高めのLDLコレステロールが気になる方に |
| 中性脂肪 | 中性脂肪を低下させる | 中性脂肪が高めの方の食生活のサポートに |
「下げる」「減少させる」の言い切りは、届出資料であるシステマティックレビューの結論と1対1で一致しない限り、景品表示法第8条第1項の不実証広告規制(2026年9月時点)の対象になり得ます。
届出表示から逸脱しない書き方の原則
- 効果は対象者への語りかけ(「〜が気になる方に」)に置き換え、断定を避ける
- 3機能を束ねた「同時にケアできるのは日本初※」型の複合訴求は、複合効果を示す根拠資料が別途なければ使わない
- グラフ・体験談・アニメーションが、届出の数値以上の効果量を印象づけると優良誤認(景品表示法第5条第1号)に触れる境目になる
- 「1日○mgで血圧が下がる」といった定量訴求は、届出の結論と完全一致するかを法務が事前確認する
健康食品の誇大表示は健康増進法第65条でも規制されるため、食品表示に絡む別の規制ラインとあわせて確認してください。
同じ業種が今すぐ確認すべき項目はどれか
機能性表示食品・特保・健康食品・サプリメントの事業者が最初に確認すべきは、広告の効果・機能が届出表示の範囲内に収まっているかです。本事例で命じられた課徴金は1億903万円。自社違反事例DB(景品表示法×健康食品、2010年4月〜2026年6月の43件)でも、逸脱と根拠不提出が二大リスクです。
広告制作段階で回す6つの確認項目
制作を進める前に、次の6項目を書面で確認します。1つでも「いいえ」があれば掲出を止めます。
- 広告に書いた効果・機能は、消費者庁に届け出た機能性表示の範囲内か
- 届出資料(システマティックレビュー等)の結論と広告表現が1対1で対応しているか、社内で文書化したか
- 「血圧を下げる」「コレステロールを減少させる」など定量的・断定的な表現を使っていないか
- 複数成分の「同時にケア」訴求に、複合効果を示す根拠資料が別途あるか
- グラフ・体験談・アニメーションが数値や効果量について誤った印象を与えていないか
- 合理的根拠資料の提出を求められた際、15日以内に対応できる資料管理体制があるか
15日という期限は、景品表示法第8条第3項(不実証広告規制、2026年9月時点)に基づく提出要求への対応日数です。この体制がないと、根拠があっても不提出扱いになります。健康食品広告の是正手順は違反を防ぐための実務対策に整理しています。
措置命令と課徴金のどちらが自社に及ぶか
自社DB43件のうち、課徴金納付命令は11件、措置命令は20件です。違反類型は優良誤認(効果・性能)39件、不実証広告規制(根拠不提出)27件が上位を占めます。
- 表示の裏付け資料を出せない、または届出範囲を超えた効果を訴求している場合、優良誤認・不実証広告として措置命令の対象になりやすい
- そのうえで対象期間の売上が積み上がっている場合、売上額の3%(景品表示法第8条第1項)で算定される課徴金納付命令が重なる
長期掲出ほど課徴金が膨らむため、問題表示は発見時点で即修正し、証拠を保全します。
よくある質問
届出表示の範囲内で書けば課徴金にならないのか
範囲内でも課徴金になり得ます。届出表示の文言に沿っていても、グラフ・体験談・強い断定で実際より大きな効果の印象を与えれば、景品表示法第5条第1号の優良誤認に問われます。見分ける基準は、表示全体から受ける印象が届出で採用したレビュー論文の結論と一致するかどうかです。数値の強調やビフォーアフター演出は逸脱側に傾きます。範囲内イコール安全ではありません。
機能性表示食品と特定保健用食品(特保)で広告規制は違うのか
景品表示法の規制は同じく及びます。特定保健用食品とは、国の個別許可を受けて保健の用途を表示できる食品のことです。機能性表示食品は届出制で、許可制の特保と手続きは異なります。境目は表示の裏づけ手続きだけで、景品表示法第5条第1号の優良誤認・不実証広告規制はどちらにも適用されます。許可・届出を得たこと自体は広告表現の免責になりません。
血圧・コレステロール・中性脂肪を「同時にケア」と書くのはなぜ危険なのか
複合効果を示す合理的根拠資料が別に必要だからです。3成分をそれぞれ届け出ていても、「同時にケア」は3つを一度に改善する新たな効果の主張になります。各成分の届出資料は単独の機能を裏づけるもので、複合効果までは示しません。根拠資料がなければ景品表示法第7条第2項に基づき根拠不足に問われます。訴求はいずれか一つの届出範囲に絞るのが安全側です。
合理的根拠資料は何日以内に提出する必要があるのか
原則15日以内です。景品表示法第7条第2項に基づく資料提出の求めを受けた場合、消費者庁が指定する期限は原則15日後とされ、この間に合理的根拠資料を出せなければ不当表示とみなされます。延長は例外的です。見落としやすいのは広告掲出中に資料を集め始める運用で、掲出前に届出資料と表現の対応表を整えておく体制が前提になります。
課徴金は自主的に報告すれば減額されるのか
減額制度があります。景品表示法第9条は、事業者が違反を自主的に報告した場合に課徴金額を2分の1減額する仕組みを定めています。ただし調査着手前などの要件があり、すべての自主報告が対象になるわけではありません。適用の可否や手続きは事案ごとに異なるため、最終判断は所管行政・専門家に確認してください。減額を前提にした広告運用は成り立ちません。
まとめ
自社の血圧・コレステロール・中性脂肪の広告が、届出表示の文言と1対1で対応しているかを最初に確認してください。機能性を届け出済みでも、範囲を超えれば課徴金1億903万円のような処分に至ります。優先して見直す箇所は3つです。第一に、届出にない断定・定量表現やグラフ・体験談で効果を強調していないか。第二に、複数成分を「同時にケア」と束ねる訴求に、複合効果の合理的根拠資料があるか。第三に、景品表示法第7条第2項の資料提出(原則15日以内)に備え、届出資料と広告表現の対応表を掲出前に整えているか。この3点を6項目の自己点検に落とし込み、逸脱している表現から順に修正します。範囲内イコール安全という前提を外し、表示全体の印象が届出の結論と一致するかで可否を判定してください。
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監修:薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)の資格を持ち、健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当する広告審査の実務者。(2026年9月時点の情報です)
