健康食品の広告で健康の保持増進効果を著しく事実と異なる形で示す表現は、健康増進法第65条第1項の誇大表示として禁止されます。誇大表示(健康増進法第65条第1項)とは、食品として販売に供する物の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する、または著しく人を誤認させる表示のことです。同じ文言が景品表示法第5条第1号の優良誤認や、医薬品医療機器等法第66条の誇大広告にまたがることも多く、どの表現がどの法律で問題になるかの切り分けが実務の起点になります。2026年9月時点の条文と処分例をもとに三法を条番号で振り分ければ、修正すべき文言と社内チェックの優先順位が決まります。
健康増進法の誇大表示とは?何が禁止されているか
健康増進法の誇大表示とは、食品の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示、または著しく人を誤認させる表示のことです。健康増進法第65条第1項(誇大表示の禁止、2026年9月時点)が、こうした表示を媒体を問わず禁じています。
誇大表示の定義(著しく事実に相違・著しく人を誤認させる表示)
判断の柱は次の3点です。
- 対象は「健康保持増進効果等」の表示(健康維持・増進、栄養成分の効果、特定の保健の用途など)
- 「著しく事実に相違する」表示
- 「著しく人を誤認させる」表示
実際にあるかのように見せる暗示的な表現も、この定義に含まれます。
対象になる『食品』と媒体の範囲
対象は「食品として販売に供する物」全般です。錠剤・カプセル状の加工食品に限りません。
| 対象になる食品 | 対象になる媒体 |
|---|---|
| 錠剤・カプセル・粉末のサプリ | 容器包装・ラベル |
| 野菜・果物・調理品など一般食品 | チラシ・新聞・雑誌広告 |
| 外観から食品と認識される物 | Web・LP・SNS・動画 |
外観から一般食品と認識される野菜・果物・調理品も含む点は、消費者庁のQ&A(令和6年7月)で示されています。パッケージからSNS投稿まで、媒体による例外はありません。
旧第31条から第65条への条番号の変更
誇大表示の禁止規定は、かつて健康増進法第31条に置かれていました。2026年9月時点では条番号が繰り下がり、第65条第1項が該当条文です。古い解説記事や社内マニュアルが第31条のまま残っていると、条番号ベースの自己点検で参照先を誤ります。引用する際は第65条で確認してください。
健康増進法・景品表示法・薬機法はどう違う?重複適用の切り分け
同じ健康食品広告でも、根拠法によって結末が変わります。健康増進法は勧告・命令が中心で課徴金がなく、景品表示法は課徴金納付命令まで及び、薬機法は回収・刑事罰に至るおそれがあります。表現の内容で該当法が切り替わる点を押さえる必要があります(2026年9月時点)。
三法の目的と規制対象の違い
三法は狙う対象が異なります。次の比較表で整理します。
| 法律・条番号 | 主な規制対象 | 処分の中心 |
|---|---|---|
| 健康増進法第65条 | 健康保持増進効果等の著しい誇大表示 | 勧告・命令(第66条)/課徴金なし |
| 景品表示法第5条第1号 | 優良誤認表示(実際より著しく優良と誤認) | 措置命令・課徴金納付命令(第8条) |
| 医薬品医療機器等法第66条 | 医薬品等の誇大広告 | 中止命令・刑事罰 |
| 医薬品医療機器等法第68条 | 承認前医薬品等の広告禁止 | 回収・刑事罰 |
重複適用されるのはどんな表現か
1つの表現が複数法に同時に触れます。判断の分岐は次のとおりです。
- 「著しく事実に相違する健康保持増進効果」を書く:健康増進法第65条と景品表示法第5条第1号の両方に該当するおそれ
- 効果の根拠資料を提出できない:景品表示法の不実証広告規制(第7条第2項)で優良誤認とみなされるおそれ
- 「病気の治療・予防」を暗示する:医薬品医療機器等法第68条の医薬品的効能効果の標ぼうに該当するおそれが高い
「治る」「予防する」に踏み込んだ瞬間、健康増進法・景表法の枠を越えて薬機法の領域に入ります。この線引きが最初の判断軸です。
処分の重さ・課徴金の有無の違い
制度上の非対称が実務判断を左右します。健康増進法第65条の誇大表示は、第66条の勧告・命令が中心で、金銭的な課徴金制度を持ちません。一方、景品表示法は第8条で課徴金納付命令があり、対象期間の売上額の3%が算定されます。
- 健康増進法:勧告→従わない場合に命令(第66条)、罰則はあるが課徴金なし
- 景品表示法:措置命令に加え課徴金納付命令(売上額の3%)
- 薬機法:中止命令・回収・刑事罰
同じ誇大表現でも、命令止まりか課徴金まで科されるかの分かれ目は根拠法で決まります。優先して直すべきは、景表法・薬機法の両方に触れる効果効能の断定表現です。
健康食品で誇大表示になるNG表現例と言い換え
効果・性能を断定する表現、医薬品的な効能効果を暗示する表現は、健康増進法第65条・景品表示法第5条・薬機法(医薬品医療機器等法)で問題になるおそれが高い表現です。行政の指導・処分で実際に問題視された文言を起点に、方向性を示します(2026年9月時点)。
効果・性能を断定するNG表現
「疲労回復」「免疫力アップ」(2026年3月23日 行政指導)や「高めの血圧がみるみる…」「お腹の脂肪を減らす」(2025年8月28日 行政指導)は、いずれも効果を断定した表現として問題視されました。前者はA社(健康食品通販)、後者はB社(サプリメント通販)の事例です。
| NG表現 | 該当のおそれがある法律 | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| 疲労回復 | 景表法第5条第1号/健康増進法第65条 | 効果を断定せず、根拠のある成分名の表示にとどめる |
| 免疫力アップ | 景表法第5条第1号 | 身体機能への作用を暗示しない |
| 高めの血圧がみるみる… | 景表法第5条第1号/薬機法第66条 | 数値改善・速効性の暗示を削除する |
| お腹の脂肪を減らす | 景表法第5条第1号 | 摂取で痩身するかのような表現を避ける |
医薬品的な効能効果を暗示するNG表現
「頭髪の悩みを根本から改善する」(2026年3月23日 行政指導、C社・美容健康通販)のように、身体の疾病や部位への治療的効果を示す表現は、薬機法第68条(承認前医薬品の広告禁止)・第66条(誇大広告等の禁止)の問題になるおそれが高い表現です。医薬品成分の含有をうたう表現も同様に扱われます。
自社の効能を暗示した口コミの扱いでも、体験談を通じた効果の断定は繰り返し指摘されています。
使える言い換えの考え方
- 効果・効能そのものを言い換えるのではなく、根拠のある範囲まで主張を下げる
- 断定・速効性・数値改善(「みるみる」「〇日で」)の語を外す
- 身体の部位・疾病名と改善をセットで書かない
- 成分の一般的な働きの説明にとどめ、摂取者の変化として書かない
言い換えは語句の置換で済む作業ではありません。主張の強さを、提出できる根拠の範囲まで下げる判断が起点になります。
実際の処分・指導ではどんな表現が問題になったか
景品表示法違反として健康食品で問題になるのは、痩身や大幅な効果を数値やランキングで断定する表現です。自社DB(景表法×健康食品、2010年4月1日〜2026年6月29日の43件、2026年9月時点)でも、効果を誇張する優良誤認が最多です。
処分の内訳(措置命令・課徴金・指導)
43件の処分区分は次のとおりです。
- 措置命令:20件
- 課徴金納付命令:11件
- 調査結果の公表:5件
- 行政指導・改善指導:5件
- 注意喚起:1件
- ガイドライン・通知:1件
課徴金納付命令は、景品表示法第8条に基づき対象商品の売上額の一定割合が算定されます(2026年9月時点)。
違反類型で多いもの
多い順に、優良誤認(効果・性能)39件、不実証広告規制(根拠不提出、景品表示法第7条第2項)27件、No.1・最上級表示9件、体験談による効能の暗示8件、ステルスマーケティング告示6件、医薬品的な効能効果の標ぼう6件、医薬品成分の含有6件、打消し表示の不備4件です。効果の断定と根拠不足がセットで認定される点が実務での差し戻し理由と重なります。
近年の認定表現の例
| 認定表現 | 処分・時点 | 業種 |
|---|---|---|
| SNSでも大人気! | 措置命令・2026年6月29日 | 健康食品通販 |
| 3週間で60.8kg→47.2kgまで痩せた方法がすごい!/No.1 | 課徴金納付命令・2025年6月30日 | 機能性表示食品(サプリ通販) |
数値での減量断定とNo.1表示が同時に問題視されており、同じ構造の表現は自社広告でも点検対象になります。類似の認定表現は健康食品広告の違反事例まとめで確認できます。
誇大表示と判断される基準と打消し表示の落とし穴
誇大表示かどうかは、表示物全体から一般消費者が受ける印象・認識で判断されます(消費者庁『健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について』平成28年6月30日制定・令和4年12月5日一部改定、2026年9月時点)。個別の一文だけで無罪にはなりません。
「著しく」の判断は誰の目線か
「著しく事実に相違」するかは、広告主の意図ではなく一般消費者が受ける印象で決まります。写真・図表・キャッチコピーを含む表示物全体で、実際より優良と誤認させれば該当するおそれがあります。
打消し表示・注釈で回避できるか
「個人の感想です」「効果には個人差があります」の一文は、強調表示を打ち消せなければ免罪符になりません。次の場合は打消し表示の不備と扱われます(DB上4件)。
- 強調表示より文字が小さい
- 強調表示から離れた位置にある
- 強調表示の内容と矛盾する
| NG(不備になる) | OK(成立する) |
|---|---|
| 大きな効果コピー+隅に極小注釈 | 強調と同一視野・同等サイズで併記 |
| 感想と矛盾する断定表現 | 断定を避け事実と整合させる |
根拠資料の提出(不実証広告規制)
効果を標ぼうすると、景品表示法第7条第2項の不実証広告規制により合理的根拠資料の提出を求められます。原則15日以内に提出できなければ、優良誤認表示とみなされます。詳しくは根拠資料の提出義務をまとめた解説を確認してください。
自社の健康食品広告を確認するチェックリスト
自己点検は「表現レベル」「根拠・媒体」の順で行います。健康増進法第65条・景品表示法第5条・医薬品医療機器等法第68条の三法に分けて、断定・暗示・No.1・体験談・打消し表示の5点を優先的に見ます(2026年9月時点)。
表現レベルの点検項目
- 健康保持増進効果を断定していないか
- 病気の治療・予防を暗示していないか(医薬品医療機器等法第68条)
- No.1・最上級表示に根拠と調査出典を明示しているか
- 体験談で効果を保証していないか
- 打消し表示が強調表示を実際に打ち消せているか(文字サイズ・配置を含む)
根拠・媒体の点検項目
- 効果表示に合理的根拠資料をそろえているか(提出できない表現は使わない)
- 点検対象は6媒体:パッケージ・LP・チラシ・SNS投稿・アフィリエイト・インフルエンサー投稿。いずれも健康増進法第65条の規制対象です
迷ったときの相談先
最終判断は所管行政(消費者庁・都道府県)や専門家に確認する前提で進めます。判断に迷う表現は、事業者向けの違反回避の進め方を踏まえたうえで、広告表現の改善相談を活用してください。法的判断の代行は行いません。
よくある質問
健康増進法の誇大表示に違反すると罰則はありますか
いきなり刑事罰にはなりません。まず消費者庁や都道府県による勧告が行われ、これに従わない場合に命令(健康増進法第66条)へ進み、命令違反の段階で罰則の対象になります。段階を踏む仕組みのため、勧告・指導の時点で表示を是正すれば刑事罰は回避できます。景品表示法で並行して処分されると課徴金が加わる点は別に注意します。
健康増進法違反に課徴金はありますか
健康増進法には課徴金制度がありません。課徴金は景品表示法第8条による制度で、同じ表現が優良誤認(景品表示法第5条第1号)に該当した場合に、対象期間の売上額の3%が課され得ます。健康増進法単独なら勧告・命令にとどまる一方、景表法が適用されると金銭的負担が生じる非対称があります。効果をうたう表現ほど景表法側のリスクを先に確認します。
機能性表示食品なら誇大表示になりませんか
機能性表示食品でも誇大表示になり得ます。届け出た機能性の範囲を超える効果や、痩身効果、No.1などの最上級表現をうたえば、届出の裏付けを離れて問題になります。機能性表示食品を対象に2025年6月30日公表の課徴金事例も出ています。届出をもって免罪符とせず、広告文言が届出内容に収まっているかを個別に確認します。
『個人の感想です』と書けば体験談広告は問題ありませんか
『個人の感想です』と付ければ問題がなくなるわけではありません。打消し表示は、強調した効果を実際に打ち消せているかで判断されます。大きな体験談で効果を印象づけ、小さな注記で感想と断る構成は、打消しとして機能しないと評価されます。体験談による効能の暗示として誇大表示に該当するおそれが高く、注記の有無より広告全体が与える印象を基準に見直します。
錠剤やカプセルではない普通の食品も健康増進法の対象ですか
対象になります。健康増進法第65条は、錠剤やカプセル状の健康食品に限らず、食品として販売に供する物を広く対象にします。野菜・果物・調理品など外観から一般食品と分かる物でも、健康保持増進効果を著しく誇大に表示すれば規制の対象です。消費者庁のQ&Aもこの範囲を示しており、剤形ではなく効果をうたっているかで判断します。
まとめ
健康増進法第65条第1項の誇大表示は、健康食品の効果を著しく事実と異なる形で示す表現を禁止します。同じ表現が景品表示法第5条第1号の優良誤認に当たれば、景表法第8条により売上額の3%が課徴金の対象になります。健康増進法は勧告・命令(第66条)が中心で課徴金制度を持たず、医薬品医療機器等法第66条は医薬品的な効能効果の標ぼうを止めます。自社広告を見直すときは、まず疾病の治療・予防や痩身をうたう文言、No.1などの最上級表現、体験談と『個人の感想です』の組み合わせを洗い出します。次に、その表現が三法のどれに触れるおそれがあるかを条番号で振り分け、課徴金リスクの高い優良誤認から修正の優先順位を決めます。打消し表示は強調表示を実際に打ち消せているかで判断され、体裁だけでは回避になりません。2026年9月時点の基準で条番号ベースの社内チェック体制を整えることが、再発防止につながります。
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法的な適否の判断を代行するものではなく、表現と運用の改善のご相談として承ります。
監修は、薬機法管理者・YMAA(薬機法医療法遵守広告代理店認証)を保有し、健康食品・化粧品・美容クリニックの広告表現チェックを継続して担当する広告審査の実務者が務めています。(2026年9月時点の情報です)
