「疲労回復」はNG、「働く方の栄養補給に」はOK
サプリ広告の”言える/言えない”を、自社の広告に当てはめて判断する
健康食品やサプリは、法律上は「ただの食品」です。だから広告で効果や効能をうたうと、その瞬間に「未承認の医薬品を売っている」とみなされます。化粧品より言える範囲は狭く、「疲労回復」「脂肪燃焼」といった一見ふつうの言葉もNGです。ただし、通る言い方や、効能を言えるようになる制度もあります。自社の広告を1文ずつ照らしながら読み進めてください。
📋 目次
- サプリは「食品」。原則、効能は言えない
- 自己診断:この5パターンに当てはまっていないか
- 医薬品とみなされる4つのポイント
- 言えないNG表現と、なぜNGなのか
- NG→OK 言い換え集
- 例外的に効能を言えるルート(トクホ・機能性表示ほか)
- やりがちな失敗と落とし穴
- 迷ったときの判断ステップ
- よくある質問
- まとめ:今日やる順番
🎯サプリは「食品」。原則、効能は言えない
結論:健康食品・サプリは薬機法で定義されておらず、法律上は一般の食品と同じ扱いです。効能効果をうたうと未承認の医薬品とみなされ、薬機法第68条の違反になります。判断の軸は化粧品と同じ「体の変化を言っているか」。ここに食品ならではの4つのチェックが加わります。
なぜ「食品なのに薬機法」なのか
薬機法が規制するのは医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器です。健康食品はそのどれでもありません。ところが、食品なのに「病気が治る」「体の調子を整える」と医薬品のような効能をうたうと、法律上は「医薬品を無許可で売っている」と評価されます。これが無承認無許可医薬品です。
化粧品よりさらに厳しい
化粧品には「言える56効能」がありますが、一般の健康食品には、そうした”言える効能リスト”がありません。原則として、体への効果は何も言えないのが出発点です。
「健康食品」という区分は法律上ない
「健康食品」「サプリメント」という言葉に、法律上の定義はありません。国が機能性を認めた「保健機能食品(トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品)」以外は、すべて一般食品と同じ扱いです。だから、届け出も許可もないサプリは、効能を言えないのが基本になります。
放置のリスク:行政指導や措置命令のほか、対象商品の売上に対する課徴金(薬機法4.5%)の対象になります。ステラ漢方事件(2020年)では、広告主だけでなく広告代理店の社員も含め6名が逮捕されました。規制対象は「何人も」で、制作会社・ライター・アフィリエイターも含まれます。
🔍自己診断:この5パターンに当てはまっていないか
使い方:次の5つのどれかに当てはまる表現があれば、その箇所は薬機法違反の可能性が高い部分です。キャッチだけでなく、本文・成分説明・体験談・画像内の文字まで1つずつ照らしてください。1つでも該当すれば修正対象です。
- 1病気の治療・予防を言っている例:糖尿病が改善/高血圧に/便秘が治る/花粉症に効く/がん予防。病名に絡めた効果はすべてNG。
- 2体の機能を増強・変化させると言っている例:疲労回復/免疫力を高める/脂肪を燃やす/老化防止/血液サラサラ/デトックス/代謝アップ。
- 3体の部位への作用を言っている例:腸をきれいに/ひざの痛みに/目の疲れに/肌をきれいに。部位+効果は体の変化とみなされる。
- 4医薬品のような飲み方・成分を書いている例:食後に1日3錠/症状が出たときに/「有効成分」配合。用法用量や医薬品用語は医薬品的。
- 5体験談・医師推薦・保証がある例:飲んで2ヶ月で−10kg/医師も推薦/必ず痩せる。効果の証明・保証・権威づけ。
チェックする場所:キャッチコピーだけでなく、小見出し・本文・成分表・「お客様の声」・バナーや画像内の文字・LP下部の注記まで見ます。摘発は、目立つコピーより、途中の一文や画像内テキストで起きることが多いです。
判定:1つでも該当したら要修正です。次章から、なぜNGなのか(4つのポイント)と、訴求力を落とさない直し方を見ていきます。
🧪医薬品とみなされる4つのポイント
要点:食品が医薬品扱いになるかは、①成分 ②剤形 ③用法用量 ④効能効果 の4つで判断されます(昭和46年の通知が基準)。効能効果だけでなく、成分や飲み方でもアウトになる点に注意してください。
| ポイント | NGになる例 | OK/セーフ |
|---|---|---|
| ① 成分 | 「専ら医薬品」の成分(ホルモン等)を配合 | 食品として使える成分(イソフラボン等) |
| ② 剤形 | アンプル・舌下錠・口腔スプレー | カプセル・錠剤・粉末・顆粒・液状(「食品」表示) |
| ③ 用法用量 | 食後に/1日3錠/就寝前に | 1日3粒を目安に水などと |
| ④ 効能効果 | 体の変化・病名・部位への作用 | 健康維持・栄養補給(抽象) |
4つのうち1つでも医薬品的と判断されれば、製品全体が「医薬品」とみなされます。効能をうたっていなくても、アンプル剤形というだけでアウトになり得ます。逆に、効能表現さえ避ければ、大半は食品として問題なく売れます。
特に重い「成分」の落とし穴:エストロゲン等のホルモンや「専ら医薬品として使用される成分」は、そもそも食品に使えません。この場合は表現の言い換えでは救済できず、成分そのものを差し替える必要があります。「エストロゲンと似た働き」といった作用の標榜も、体内変化としてNGです。
剤形(形状)の線引き
カプセル・錠剤・粉末・顆粒・液状は、容器や表示で「食品」とわかれば問題ありません。一方、アンプル・舌下錠・口腔スプレーなど、医薬品にしか使われない形状は、それだけで医薬品的と判断されます。注射器を思わせる容器も避けます。
用法用量の線引き
「食後に」「1日3回」「就寝前に」「症状が出たら」といった医薬品的な飲み方の指定はNGです。「1日3粒を目安に、水などといっしょに」のように摂取量の目安として書く形なら問題ありません。「服用」も医薬品用語なので「お召し上がりください」に変えます。
🚫言えないNG表現と、なぜNGなのか
NGの正体:「病気の治療・予防」「体の機能の増強」「部位への作用」「保証・体験談」。この型を知れば、初見の表現でも自分で判断できます。
病気の治療・予防
「糖尿病が改善」「高血圧の方に」「便秘が治る」「花粉症に効く」「生活習慣病予防」。病名に絡めた効果はすべてNGです。「予防」も体への効果なので言えません。うつ・不眠・アレルギー・更年期・認知症など、症状名や状態名も同じ扱いです。「〜でお悩みの方へ」と病気を連想させてから商品に繋げるのも、暗示としてNGになります。
体の機能の増強・増進
「疲労回復」「体力増強」「免疫力を高める」「脂肪燃焼」「老化防止」「若返り」「血液サラサラ」「デトックス」。これらは体の組織機能を変える表現で、医薬品的効能にあたります。「代謝アップ」「抗酸化で錆びない体」「腸内環境を改善」なども同じ理由でNGです。
部位への作用・間接効果
「腸をきれいに」「ひざの痛みに」「目の疲れに」は、部位+効果で体の変化とみなされます。「鉄分の吸収を高める」のような間接効果も、体への作用としてNGです。
ダイエット・バストアップ・育毛
「脂肪を溶かす/燃やす」「食欲を抑える」はNG。単に「ダイエット」「やせる」や「低カロリーだから太らない」はOKですが、「低糖質だから痩せる」は根拠があってもNGです(言葉狩り)。「バストアップ」「爆乳」「育毛」も体の変化なので使えません。
「有効成分」という言葉:「有効成分」は医薬品・医薬部外品の用語です。食品で使うと薬理作用を暗示するためNG。「有用成分」「注目の成分」に置き換えます。
「言葉狩り」に見える境界線
一見おかしく感じる線引きがあります。仕組みを知ると迷いません。
OK/NGの例:「ダイエット」「やせる」は体型の話でOK。「脂肪を燃やす」は体内の作用でNG。「低カロリーだから太りにくい」はカロリーの事実でOK。「低糖質だから痩せる」は痩身効果の断定でNG。「栄養補給」はOK、「滋養強壮」は医薬品的でNG。境目は”体の中で何かが起きる”と言っているかどうかです。

🔄NG→OK 言い換え集
要点:体の変化・病名を「抽象的な健康維持・栄養補給・他者からの評価」に寄せると通せます。成分そのものがNGな場合だけは、言い換えでなく差し替えが必要です。
| 訴求 | NG表現 | OK表現(通せる言い換え) |
|---|---|---|
| 高血圧・血流 | 血圧が下がる/血液サラサラ | 毎日の健康維持に/生活習慣が気になる方に |
| 疲労 | 疲労回復/体力増強 | 働き盛りの方の栄養補給に |
| 老化 | 老化防止/若返り | 美容のために/若々しい毎日を送りたい方に |
| 便通 | 便秘が治る/宿便を排出 | 毎日のすっきりした生活をサポート |
| コラーゲン | 美肌の成分コラーゲン配合 | 肌の成分コラーゲン配合 |
| ダイエット | 飲むだけでポッコリお腹がへこむ | 流行のスリムなズボンが似合うと言われます |
| 育毛 | 育毛サプリ/髪が生える | 美容院が開発したサプリ |
| 関節 | ひざの痛みに | 毎日元気で歩ける喜び |
| 脂肪 | 脂肪を燃やす/脂肪燃焼 | 活動的な毎日を応援 |
| 飲み方 | 食後に1日3錠 | 1日3粒を目安に水などと |
| 免疫 | 免疫力を高める/風邪をひきにくく | 季節の変わり目の健康維持に |
| 睡眠 | よく眠れる/不眠を改善 | 休息のリズムを大切にしたい方に |
| 目 | 目の疲れに/視力回復 | スマホやPCをよく使う方に |
| 血糖値 | 血糖値を下げる/糖尿を予防 | 食生活が気になる方の健康維持に |
| むくみ | むくみを解消/老廃物を排出 | すっきりした毎日をサポート |
「体の成分の補給」はOK
体を変えるのはNGですが、体にある成分を補うと言うのはOKです。「肌の成分コラーゲンを補給」「軟骨成分」「腸の善玉菌を補給」は範囲内です。「美肌の成分」にすると”肌を美しくする”=体の変化になるため、NGに変わります。ヒアルロン酸・セラミド・乳酸菌なども「補給」の形なら言えますが、「関節の痛みに効くグルコサミン」のように効果を結びつけた瞬間にNGへ変わります。
「言われる型」に置き換える
自分で効果を断定せず、他者からの評価に置き換えると通りやすくなります。「痩せた」ではなく「スリムなズボンが似合うと言われる」、「顔色が良くなった」ではなく「明るいねと言われた」。事実の感想として述べる形です。ただし、事実でない体験を作るのは景表法違反になります。あくまで実際にあった声の範囲で使ってください。
🎫例外的に効能を言えるルート
要点:原則は言えませんが、制度に乗れば機能性を表示できます。国の関与が強い順に、トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品の3つ(保健機能食品)と、誰が見ても食品の「明らか食品」があります。
1
特定保健用食品(トクホ)
国が個別に審査・許可。許可マークあり。「おなかの調子を整える」等を表示可。取得に時間と費用がかかる。
2
栄養機能食品
規格基準を満たせば届出不要の自己認証。対象はビタミン13・ミネラル6・n-3系脂肪酸のみ。定型文+栄養素名で表示。
3
機能性表示食品
科学的根拠(臨床試験やSR)を消費者庁に届け出れば機能性を表示可。病気・改造的表現は不可。
| 制度 | 言える表示の例 | 手続き |
|---|---|---|
| トクホ | おなかの調子を整える/脂肪の吸収をおだやかに | 国の個別許可(審査あり) |
| 栄養機能食品 | ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です | 規格基準を満たせば届出不要 |
| 機能性表示食品 | 睡眠の質を高める(届け出た範囲) | 消費者庁へ届出(根拠が必要) |
明らか食品なら効能を言える
野菜・果物・卵・魚・豆腐・味噌・緑茶など、誰が見ても食品とわかるものは「明らか食品」として、効能を述べても薬機法の対象外です。
ただし条件つき:解説本に列挙された食品に限られ(緑茶はOKでもウーロン茶はNG)、有効成分を添加したら明らか食品ではなくなります。また、明らか食品でも病名の訴求や、根拠のないオーバートークは景表法・健康増進法の対象になります。
制度に乗っても言えないこと
保健機能食品でも、届け出た範囲や許可された範囲を超えれば違反です。トクホでも「病気が治る」は言えません。栄養機能食品は決められた定型文をそのまま使う必要があり、独自の効果を足せません。機能性表示食品も、病気の治療・予防や、部位を若返らせるような改造的表現はできません。「制度に乗った=何でも言える」ではない点に注意してください。
⚠️やりがちな失敗と落とし穴
要点:表現を直しても、成分・見せ方・体験談で崩れます。特に「成分そのものがNG」「アンケート方式」「打消し表示」「景表法」で足をすくわれます。
成分そのものがNG(言い換え不可)
エストロゲン等のホルモンや「専ら医薬品」の成分は、食品に使えません。表現を直しても、含んでいる時点で医薬品扱いです。
対策:食品に使える成分(大豆イソフラボン等)へ差し替える。
アンケート・チェック方式
「よく眠れますか?」等を答えさせ、最後に「あなたにおすすめ」と提示する形も、効果の暗示としてNGになります。
対策:症状チェックから商品提案へ繋げる構成にしない。
医師推薦・体験談
医師の推薦は、中身から効果が読めるとNG。体験談で「〜が治った」と治療効果を暗示するのも不可です。
対策:肩書で効果を匂わせない。感想は使用感の範囲に留める。
打消し表示・景表法
「※個人の感想です」を付けても、全体で強い効果を訴求していれば無効。「飲むだけで痩せる」は景表法でも重い違反です。
対策:効果や数値を出すなら合理的な根拠とセットに。
景表法の課徴金は現実に出ています:ダイエット味噌汁「飲むだけで痩せる」に課徴金530万円、着圧下着「履くだけで2週間−10cm」に6,523万円、豊胸サプリでは1億円超の事例もあります。体験談や打消し表示は根拠になりません。景表法の課徴金は売上の3%、薬機法の4.5%と重なることもあります。
課徴金の試算
対象商品の年間売上が1億円だった場合の課徴金の目安です。
- 薬機法(4.5%):450万円
- 景表法(3%):300万円
- 両方を問われれば、合算で750万円規模になることもあります
これに加えて、返金対応・広告の差し替え・売上停止・信用の低下が重なります。
危ない広告の直し方(例)
実際の広告に近い形で、どこを直すかを見ます。効果の断定を、他者評価と健康維持に寄せるのがコツです。
Before(NG):「飲むだけで脂肪を燃やし、免疫力アップ。医師も推薦、2ヶ月で−8kgの実感。」
After(通せる):「活動的な毎日を応援。季節の変わり目の健康維持に。続けた方から『体が軽いと言われる』の声。」
変えたのは4点です。「脂肪を燃やす→活動的な毎日」「免疫力アップ→健康維持」「医師も推薦→削除」「−8kgの実感→言われる型の感想」。効果の断定・病的作用・権威づけを外しています。

🧭迷ったときの判断ステップ
要点:グレーな表現は次の3ステップで切り分けます。それでも判断がつかないときは、第三者の一次チェックに回すのが安全です。
1
体の変化・病名・部位を言っていないか
効能効果の入口です。抽象的な健康維持や栄養補給に収まっていればセーフ、体を変える・病気に絡める表現なら黄色信号。
「治る・改善・回復・燃焼・免疫・◯◯に効く」が出たら要注意。
2
成分・剤形・用法用量は大丈夫か
「専ら医薬品」の成分を含んでいないか、アンプル等の剤形でないか、医薬品的な飲み方の指定をしていないかを確認します。
成分がNGなら言い換え不可。差し替えが必要。
3
制度に乗る選択肢はないか
機能を言いたいなら、機能性表示食品やトクホの取得も検討します。数値や効果を出すなら景表法の根拠も必要です。
言いたい効能があるなら、制度で言える形に載せる。
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❓よくある質問
Q. 「栄養補給」は言えますか?
時期を示す形ならOKです。「発育期のお子様の栄養補給に」「産後の栄養補給に」は可。「病中病後の栄養補給に」は病気に絡むためNGです。
Q. 成分名を書くだけでもNGですか?
食品に使える成分なら、成分名の記載自体は問題ありません。NGになるのは、その成分の効果(体の変化)を結びつけて書いた場合です。
Q. 機能性表示食品なら何でも言えますか?
いいえ。届け出た機能性の範囲だけです。病気の予防・治療や、バストアップのような改造的表現は言えません。
Q. 「ダイエット」という言葉は使えますか?
単に「ダイエット」「やせる」と言うだけなら薬機法上は可能です。「脂肪を燃やす」など体の変化に踏み込むとNG。数値の痩身効果を出すなら景表法の根拠も必要です。
Q. お客様の声(体験談)は載せられますか?
使用感や生活の感想までは可能な場合がありますが、「〜が治った」「痩せた」など効果を暗示する体験談はNGです。劇的なビフォーアフター写真も避けます。
Q. 違反すると何が起きますか?
行政指導・措置命令、課徴金(薬機法4.5%)の対象になります。悪質な場合は刑事事件として逮捕されることもあり、広告に関わった代理店やライターも対象です。
📝まとめ:今日やる順番
自社サプリ広告を”通せる状態”にする5ステップ
- 5パターン(病気・機能増強・部位・医薬品的な飲み方成分・体験談保証)で自己診断する
- 成分・剤形・用法用量の4ファクターも確認する(成分がNGなら差し替え)
- 言い換え表で「治す・変える」を「健康維持・栄養補給・言われる型」に直す
- 機能を言いたいなら、機能性表示食品・トクホなど制度に載せる選択肢を検討する
- 効果や数値を出すなら景表法の根拠を用意。迷う箇所は第三者の一次チェックへ
本コラムは広告表現に関する一般的な解説であり、法的助言・鑑定ではありません。記載内容は薬機法・景品表示法・関連ガイドライン等の公開情報に基づく参考情報で、行政の判断や媒体審査の結果を保証するものではありません。法令・ガイドラインは改正される場合があります。個別の広告の最終的な適法性は、貴社の顧問弁護士等の専門家にご確認ください。

