目次

「疲労回復」はNG、「働く方の栄養補給に」はOK

サプリ広告の”言える/言えない”を、自社の広告に当てはめて判断する

健康食品やサプリは、法律上は「ただの食品」です。だから広告で効果や効能をうたうと、その瞬間に「未承認の医薬品を売っている」とみなされます。化粧品より言える範囲は狭く、「疲労回復」「脂肪燃焼」といった一見ふつうの言葉もNGです。ただし、通る言い方や、効能を言えるようになる制度もあります。自社の広告を1文ずつ照らしながら読み進めてください。

📋 目次

  1. サプリは「食品」。原則、効能は言えない
  2. 自己診断:この5パターンに当てはまっていないか
  3. 医薬品とみなされる4つのポイント
  4. 言えないNG表現と、なぜNGなのか
  5. NG→OK 言い換え集
  6. 例外的に効能を言えるルート(トクホ・機能性表示ほか)
  7. やりがちな失敗と落とし穴
  8. 迷ったときの判断ステップ
  9. よくある質問
  10. まとめ:今日やる順番

🎯サプリは「食品」。原則、効能は言えない

結論:健康食品・サプリは薬機法で定義されておらず、法律上は一般の食品と同じ扱いです。効能効果をうたうと未承認の医薬品とみなされ、薬機法第68条の違反になります。判断の軸は化粧品と同じ「体の変化を言っているか」。ここに食品ならではの4つのチェックが加わります。

なぜ「食品なのに薬機法」なのか

薬機法が規制するのは医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器です。健康食品はそのどれでもありません。ところが、食品なのに「病気が治る」「体の調子を整える」と医薬品のような効能をうたうと、法律上は「医薬品を無許可で売っている」と評価されます。これが無承認無許可医薬品です。

化粧品よりさらに厳しい

化粧品には「言える56効能」がありますが、一般の健康食品には、そうした”言える効能リスト”がありません。原則として、体への効果は何も言えないのが出発点です。

「健康食品」という区分は法律上ない

「健康食品」「サプリメント」という言葉に、法律上の定義はありません。国が機能性を認めた「保健機能食品(トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品)」以外は、すべて一般食品と同じ扱いです。だから、届け出も許可もないサプリは、効能を言えないのが基本になります。

放置のリスク:行政指導や措置命令のほか、対象商品の売上に対する課徴金(薬機法4.5%)の対象になります。ステラ漢方事件(2020年)では、広告主だけでなく広告代理店の社員も含め6名が逮捕されました。規制対象は「何人も」で、制作会社・ライター・アフィリエイターも含まれます。

🔍自己診断:この5パターンに当てはまっていないか

使い方:次の5つのどれかに当てはまる表現があれば、その箇所は薬機法違反の可能性が高い部分です。キャッチだけでなく、本文・成分説明・体験談・画像内の文字まで1つずつ照らしてください。1つでも該当すれば修正対象です。

  • 1病気の治療・予防を言っている例:糖尿病が改善/高血圧に/便秘が治る/花粉症に効く/がん予防。病名に絡めた効果はすべてNG。
  • 2体の機能を増強・変化させると言っている例:疲労回復/免疫力を高める/脂肪を燃やす/老化防止/血液サラサラ/デトックス/代謝アップ。
  • 3体の部位への作用を言っている例:腸をきれいに/ひざの痛みに/目の疲れに/肌をきれいに。部位+効果は体の変化とみなされる。
  • 4医薬品のような飲み方・成分を書いている例:食後に1日3錠/症状が出たときに/「有効成分」配合。用法用量や医薬品用語は医薬品的。
  • 5体験談・医師推薦・保証がある例:飲んで2ヶ月で−10kg/医師も推薦/必ず痩せる。効果の証明・保証・権威づけ。

チェックする場所:キャッチコピーだけでなく、小見出し・本文・成分表・「お客様の声」・バナーや画像内の文字・LP下部の注記まで見ます。摘発は、目立つコピーより、途中の一文や画像内テキストで起きることが多いです。

判定:1つでも該当したら要修正です。次章から、なぜNGなのか(4つのポイント)と、訴求力を落とさない直し方を見ていきます。

🧪医薬品とみなされる4つのポイント

要点:食品が医薬品扱いになるかは、①成分 ②剤形 ③用法用量 ④効能効果 の4つで判断されます(昭和46年の通知が基準)。効能効果だけでなく、成分や飲み方でもアウトになる点に注意してください。

ポイントNGになる例OK/セーフ
① 成分「専ら医薬品」の成分(ホルモン等)を配合食品として使える成分(イソフラボン等)
② 剤形アンプル・舌下錠・口腔スプレーカプセル・錠剤・粉末・顆粒・液状(「食品」表示)
③ 用法用量食後に/1日3錠/就寝前に1日3粒を目安に水などと
④ 効能効果体の変化・病名・部位への作用健康維持・栄養補給(抽象)

4つのうち1つでも医薬品的と判断されれば、製品全体が「医薬品」とみなされます。効能をうたっていなくても、アンプル剤形というだけでアウトになり得ます。逆に、効能表現さえ避ければ、大半は食品として問題なく売れます。

特に重い「成分」の落とし穴:エストロゲン等のホルモンや「専ら医薬品として使用される成分」は、そもそも食品に使えません。この場合は表現の言い換えでは救済できず、成分そのものを差し替える必要があります。「エストロゲンと似た働き」といった作用の標榜も、体内変化としてNGです。

剤形(形状)の線引き

カプセル・錠剤・粉末・顆粒・液状は、容器や表示で「食品」とわかれば問題ありません。一方、アンプル・舌下錠・口腔スプレーなど、医薬品にしか使われない形状は、それだけで医薬品的と判断されます。注射器を思わせる容器も避けます。

用法用量の線引き

「食後に」「1日3回」「就寝前に」「症状が出たら」といった医薬品的な飲み方の指定はNGです。「1日3粒を目安に、水などといっしょに」のように摂取量の目安として書く形なら問題ありません。「服用」も医薬品用語なので「お召し上がりください」に変えます。

🚫言えないNG表現と、なぜNGなのか

NGの正体:「病気の治療・予防」「体の機能の増強」「部位への作用」「保証・体験談」。この型を知れば、初見の表現でも自分で判断できます。

病気の治療・予防

「糖尿病が改善」「高血圧の方に」「便秘が治る」「花粉症に効く」「生活習慣病予防」。病名に絡めた効果はすべてNGです。「予防」も体への効果なので言えません。うつ・不眠・アレルギー・更年期・認知症など、症状名や状態名も同じ扱いです。「〜でお悩みの方へ」と病気を連想させてから商品に繋げるのも、暗示としてNGになります。

体の機能の増強・増進

「疲労回復」「体力増強」「免疫力を高める」「脂肪燃焼」「老化防止」「若返り」「血液サラサラ」「デトックス」。これらは体の組織機能を変える表現で、医薬品的効能にあたります。「代謝アップ」「抗酸化で錆びない体」「腸内環境を改善」なども同じ理由でNGです。

部位への作用・間接効果

「腸をきれいに」「ひざの痛みに」「目の疲れに」は、部位+効果で体の変化とみなされます。「鉄分の吸収を高める」のような間接効果も、体への作用としてNGです。

ダイエット・バストアップ・育毛

「脂肪を溶かす/燃やす」「食欲を抑える」はNG。単に「ダイエット」「やせる」や「低カロリーだから太らない」はOKですが、「低糖質だから痩せる」は根拠があってもNGです(言葉狩り)。「バストアップ」「爆乳」「育毛」も体の変化なので使えません。

「有効成分」という言葉:「有効成分」は医薬品・医薬部外品の用語です。食品で使うと薬理作用を暗示するためNG。「有用成分」「注目の成分」に置き換えます。

「言葉狩り」に見える境界線

一見おかしく感じる線引きがあります。仕組みを知ると迷いません。

OK/NGの例:「ダイエット」「やせる」は体型の話でOK。「脂肪を燃やす」は体内の作用でNG。「低カロリーだから太りにくい」はカロリーの事実でOK。「低糖質だから痩せる」は痩身効果の断定でNG。「栄養補給」はOK、「滋養強壮」は医薬品的でNG。境目は”体の中で何かが起きる”と言っているかどうかです。

🔄NG→OK 言い換え集

要点:体の変化・病名を「抽象的な健康維持・栄養補給・他者からの評価」に寄せると通せます。成分そのものがNGな場合だけは、言い換えでなく差し替えが必要です。

訴求NG表現OK表現(通せる言い換え)
高血圧・血流血圧が下がる/血液サラサラ毎日の健康維持に/生活習慣が気になる方に
疲労疲労回復/体力増強働き盛りの方の栄養補給に
老化老化防止/若返り美容のために/若々しい毎日を送りたい方に
便通便秘が治る/宿便を排出毎日のすっきりした生活をサポート
コラーゲン美肌の成分コラーゲン配合肌の成分コラーゲン配合
ダイエット飲むだけでポッコリお腹がへこむ流行のスリムなズボンが似合うと言われます
育毛育毛サプリ/髪が生える美容院が開発したサプリ
関節ひざの痛みに毎日元気で歩ける喜び
脂肪脂肪を燃やす/脂肪燃焼活動的な毎日を応援
飲み方食後に1日3錠1日3粒を目安に水などと
免疫免疫力を高める/風邪をひきにくく季節の変わり目の健康維持に
睡眠よく眠れる/不眠を改善休息のリズムを大切にしたい方に
目の疲れに/視力回復スマホやPCをよく使う方に
血糖値血糖値を下げる/糖尿を予防食生活が気になる方の健康維持に
むくみむくみを解消/老廃物を排出すっきりした毎日をサポート

「体の成分の補給」はOK

体を変えるのはNGですが、体にある成分を補うと言うのはOKです。「肌の成分コラーゲンを補給」「軟骨成分」「腸の善玉菌を補給」は範囲内です。「美肌の成分」にすると”肌を美しくする”=体の変化になるため、NGに変わります。ヒアルロン酸・セラミド・乳酸菌なども「補給」の形なら言えますが、「関節の痛みに効くグルコサミン」のように効果を結びつけた瞬間にNGへ変わります。

「言われる型」に置き換える

自分で効果を断定せず、他者からの評価に置き換えると通りやすくなります。「痩せた」ではなく「スリムなズボンが似合うと言われる」、「顔色が良くなった」ではなく「明るいねと言われた」。事実の感想として述べる形です。ただし、事実でない体験を作るのは景表法違反になります。あくまで実際にあった声の範囲で使ってください。

🎫例外的に効能を言えるルート

要点:原則は言えませんが、制度に乗れば機能性を表示できます。国の関与が強い順に、トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品の3つ(保健機能食品)と、誰が見ても食品の「明らか食品」があります。

1

特定保健用食品(トクホ)

国が個別に審査・許可。許可マークあり。「おなかの調子を整える」等を表示可。取得に時間と費用がかかる。

2

栄養機能食品

規格基準を満たせば届出不要の自己認証。対象はビタミン13・ミネラル6・n-3系脂肪酸のみ。定型文+栄養素名で表示。

3

機能性表示食品

科学的根拠(臨床試験やSR)を消費者庁に届け出れば機能性を表示可。病気・改造的表現は不可。

制度言える表示の例手続き
トクホおなかの調子を整える/脂肪の吸収をおだやかに国の個別許可(審査あり)
栄養機能食品ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です規格基準を満たせば届出不要
機能性表示食品睡眠の質を高める(届け出た範囲)消費者庁へ届出(根拠が必要)

明らか食品なら効能を言える

野菜・果物・卵・魚・豆腐・味噌・緑茶など、誰が見ても食品とわかるものは「明らか食品」として、効能を述べても薬機法の対象外です。

ただし条件つき:解説本に列挙された食品に限られ(緑茶はOKでもウーロン茶はNG)、有効成分を添加したら明らか食品ではなくなります。また、明らか食品でも病名の訴求や、根拠のないオーバートークは景表法・健康増進法の対象になります。

制度に乗っても言えないこと

保健機能食品でも、届け出た範囲や許可された範囲を超えれば違反です。トクホでも「病気が治る」は言えません。栄養機能食品は決められた定型文をそのまま使う必要があり、独自の効果を足せません。機能性表示食品も、病気の治療・予防や、部位を若返らせるような改造的表現はできません。「制度に乗った=何でも言える」ではない点に注意してください。

消費者庁機能性表示食品制度の届出・ガイドライン(消費者庁)

⚠️やりがちな失敗と落とし穴

要点:表現を直しても、成分・見せ方・体験談で崩れます。特に「成分そのものがNG」「アンケート方式」「打消し表示」「景表法」で足をすくわれます。

成分そのものがNG(言い換え不可)

エストロゲン等のホルモンや「専ら医薬品」の成分は、食品に使えません。表現を直しても、含んでいる時点で医薬品扱いです。

対策:食品に使える成分(大豆イソフラボン等)へ差し替える。

アンケート・チェック方式

「よく眠れますか?」等を答えさせ、最後に「あなたにおすすめ」と提示する形も、効果の暗示としてNGになります。

対策:症状チェックから商品提案へ繋げる構成にしない。

医師推薦・体験談

医師の推薦は、中身から効果が読めるとNG。体験談で「〜が治った」と治療効果を暗示するのも不可です。

対策:肩書で効果を匂わせない。感想は使用感の範囲に留める。

打消し表示・景表法

「※個人の感想です」を付けても、全体で強い効果を訴求していれば無効。「飲むだけで痩せる」は景表法でも重い違反です。

対策:効果や数値を出すなら合理的な根拠とセットに。

景表法の課徴金は現実に出ています:ダイエット味噌汁「飲むだけで痩せる」に課徴金530万円、着圧下着「履くだけで2週間−10cm」に6,523万円、豊胸サプリでは1億円超の事例もあります。体験談や打消し表示は根拠になりません。景表法の課徴金は売上の3%、薬機法の4.5%と重なることもあります。

課徴金の試算

対象商品の年間売上が1億円だった場合の課徴金の目安です。

  • 薬機法(4.5%):450万円
  • 景表法(3%):300万円
  • 両方を問われれば、合算で750万円規模になることもあります

これに加えて、返金対応・広告の差し替え・売上停止・信用の低下が重なります。

危ない広告の直し方(例)

実際の広告に近い形で、どこを直すかを見ます。効果の断定を、他者評価と健康維持に寄せるのがコツです。

Before(NG):「飲むだけで脂肪を燃やし、免疫力アップ。医師も推薦、2ヶ月で−8kgの実感。」

After(通せる):「活動的な毎日を応援。季節の変わり目の健康維持に。続けた方から『体が軽いと言われる』の声。」

変えたのは4点です。「脂肪を燃やす→活動的な毎日」「免疫力アップ→健康維持」「医師も推薦→削除」「−8kgの実感→言われる型の感想」。効果の断定・病的作用・権威づけを外しています。

🧭迷ったときの判断ステップ

要点:グレーな表現は次の3ステップで切り分けます。それでも判断がつかないときは、第三者の一次チェックに回すのが安全です。

1

体の変化・病名・部位を言っていないか

効能効果の入口です。抽象的な健康維持や栄養補給に収まっていればセーフ、体を変える・病気に絡める表現なら黄色信号。

「治る・改善・回復・燃焼・免疫・◯◯に効く」が出たら要注意。

2

成分・剤形・用法用量は大丈夫か

「専ら医薬品」の成分を含んでいないか、アンプル等の剤形でないか、医薬品的な飲み方の指定をしていないかを確認します。

成分がNGなら言い換え不可。差し替えが必要。

3

制度に乗る選択肢はないか

機能を言いたいなら、機能性表示食品やトクホの取得も検討します。数値や効果を出すなら景表法の根拠も必要です。

言いたい効能があるなら、制度で言える形に載せる。

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❓よくある質問

Q. 「栄養補給」は言えますか?

時期を示す形ならOKです。「発育期のお子様の栄養補給に」「産後の栄養補給に」は可。「病中病後の栄養補給に」は病気に絡むためNGです。

Q. 成分名を書くだけでもNGですか?

食品に使える成分なら、成分名の記載自体は問題ありません。NGになるのは、その成分の効果(体の変化)を結びつけて書いた場合です。

Q. 機能性表示食品なら何でも言えますか?

いいえ。届け出た機能性の範囲だけです。病気の予防・治療や、バストアップのような改造的表現は言えません。

Q. 「ダイエット」という言葉は使えますか?

単に「ダイエット」「やせる」と言うだけなら薬機法上は可能です。「脂肪を燃やす」など体の変化に踏み込むとNG。数値の痩身効果を出すなら景表法の根拠も必要です。

Q. お客様の声(体験談)は載せられますか?

使用感や生活の感想までは可能な場合がありますが、「〜が治った」「痩せた」など効果を暗示する体験談はNGです。劇的なビフォーアフター写真も避けます。

Q. 違反すると何が起きますか?

行政指導・措置命令、課徴金(薬機法4.5%)の対象になります。悪質な場合は刑事事件として逮捕されることもあり、広告に関わった代理店やライターも対象です。

📝まとめ:今日やる順番

自社サプリ広告を”通せる状態”にする5ステップ

  • 5パターン(病気・機能増強・部位・医薬品的な飲み方成分・体験談保証)で自己診断する
  • 成分・剤形・用法用量の4ファクターも確認する(成分がNGなら差し替え)
  • 言い換え表で「治す・変える」を「健康維持・栄養補給・言われる型」に直す
  • 機能を言いたいなら、機能性表示食品・トクホなど制度に載せる選択肢を検討する
  • 効果や数値を出すなら景表法の根拠を用意。迷う箇所は第三者の一次チェックへ

本コラムは広告表現に関する一般的な解説であり、法的助言・鑑定ではありません。記載内容は薬機法・景品表示法・関連ガイドライン等の公開情報に基づく参考情報で、行政の判断や媒体審査の結果を保証するものではありません。法令・ガイドラインは改正される場合があります。個別の広告の最終的な適法性は、貴社の顧問弁護士等の専門家にご確認ください。