ページはあっても、中身が欠けていれば違反
必須表示項目の「抜け」を、自社の特商法表記で自己診断する
ネットショップには、特定商取引法に基づく表記(特商法表記)が義務づけられています。多くのお店がページ自体は用意していますが、必要な項目が抜けていたり、返品特約が曖昧だったりします。抜けがあると、行政指導のほか、意図せず返品に応じる義務が生じることもあります。ここでは、必須の表示項目と、抜けやすい箇所の直し方を、自社の表記に当てはめて点検できる形でまとめます。
📋 目次
- 特商法表記は「必須項目の抜け」で決まる
- 自己診断:この項目に抜けがないか
- 必須の表示項目一覧と書き方
- トラブルの元「返品特約」の書き方
- 事業者情報(氏名・住所・電話)の注意点
- 定期購入・追加費用など見落としやすい項目
- 表示を省略できる場合の考え方
- やりがちな失敗と落とし穴
- 迷ったときの点検手順
- よくある質問
- まとめ:今日やる順番
🎯特商法表記は「必須項目の抜け」で決まる
結論:特商法表記でつまずくのは、多くが「必須項目の抜け」です。ページを用意していても、事業者名・電話番号・返品特約などが欠けていれば不十分です。まずは自社の表記に、法律が求める項目がそろっているかを確認します。判断は難しくなく、リストと突き合わせるだけです。
なぜ表示が義務なのか
通信販売は、購入者が商品を手に取れず、事業者の顔も見えないまま取引します。だから、誰が・いくらで・どう届けて・返品できるのかを、あらかじめ明示する義務があります。これが特定商取引法の求める表示です。表示が不十分だと、購入者が不利益を受けやすくなります。
抜けがあるとどうなるか
行政指導と返品リスク:表示義務を満たさないと、行政からの指示・業務停止命令の対象になります。特に返品特約を表示していない場合、購入者は商品到着後8日以内であれば、送料を自己負担して返品できます(法定の返品権)。「返品不可」にしたいなら、その旨の表示が必要です。
特商法表記はどこに置くか
特商法表記は、購入者が申込みの前に確認できる場所に置きます。サイトのフッターに常設リンクを置き、どのページからも1〜2クリックで開けるようにするのが基本です。定期購入の申込画面など、契約に進む導線からも見られるようにします。ページを作っただけで、たどり着けない場所に隠れていては意味がありません。
🔍自己診断:この項目に抜けがないか
使い方:自社の特商法表記ページを開き、次の項目が書かれているか1つずつ確認してください。1つでも抜けていれば、追記が必要です。
- 1事業者名・代表者名屋号だけでなく、正式な氏名または名称。法人は代表者名か責任者名も。
- 2住所・電話番号実際に連絡がつく住所と電話番号。私書箱や通じない番号は不可。
- 3販売価格・送料・消費税税込価格と、送料の金額または条件。価格以外の負担も。
- 4支払方法・支払時期クレジット・代引き等の方法と、いつ支払うか。
- 5引渡し時期注文からいつ発送・提供されるか。
- 6返品特約返品の可否・条件・送料の負担。書かないと8日間返品可になる。
- 7定期購入の条件定期なら、総額・回数・期間・解約方法。
確認のコツ:特商法表記ページだけでなく、商品ページ・カート・定期購入の申込画面も見ます。価格や送料、定期の条件は、申込画面での表示が特に重視されます。
判定:抜けが1つでもあれば追記します。特に「事業者名(屋号のみ)」「電話番号なし」「返品特約なし・曖昧」は、実際に多い抜けです。
📋必須の表示項目一覧と書き方
要点:通信販売の広告に表示すべき項目は、法律で定められています。ネット通販では、特商法表記ページにまとめて書くのが基本です。主な項目と書き方のポイントは次のとおりです。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 事業者の氏名・名称 | 正式名称。個人は本名。屋号のみは不可。 |
| 住所 | 現に活動する住所。連絡が取れること。 |
| 電話番号 | 実際につながる番号。受付時間を添えると良い。 |
| 運営責任者 | 法人は代表者名または業務責任者名。 |
| 販売価格 | 税込で表示。複数商品なら各ページの価格に従う旨。 |
| 送料・手数料 | 金額または「◯円以上で無料」等の条件。代引手数料等も。 |
| 支払方法・時期 | クレジット・代引・銀行振込等と、前払い/後払いの別。 |
| 引渡し時期 | 「入金確認後◯営業日以内に発送」等。 |
| 返品特約 | 返品の可否・期限・条件・送料負担。次章で詳述。 |
| 定期購入の条件 | 総額・継続回数・各回の金額・期間・解約方法。 |
| 申込みの有効期限 | 期間限定価格等に期限があれば、その期限。 |
やり方:この表を上から自社の表記と突き合わせ、書いていない行を追記します。価格や送料は「商品ページに準ずる」と書く方法もありますが、条件は明確にします。
そのまま使える記載サンプル
雛形として、次の形を自社の内容に置き換えて使えます。◯や例の部分を実際の値に直してください。
| 項目 | 記載サンプル |
|---|---|
| 販売事業者 | ◯◯(正式名称・個人は本名) |
| 運営責任者 | 山田 太郎 |
| 所在地 | 〒000-0000 ◯◯県◯◯市◯◯ 0-0-0 |
| 電話番号 | 00-0000-0000(受付 平日10:00〜17:00) |
| メール | info@example.com |
| 販売価格 | 各商品ページに税込で表示 |
| 商品代金以外の費用 | 送料◯円(◯円以上で無料)、代引手数料◯円 |
| 支払方法・時期 | カード(注文時)/代引/銀行振込(注文後7日以内・前払い) |
| 引渡し時期 | 入金確認後◯営業日以内に発送 |
| 返品・交換 | お客様都合:到着後◯日以内・未開封に限る(返送料お客様負担)。不良品:当店負担で交換 |
サンプルの注意:これは雛形です。自社の実際の運用(送料・支払方法・返品条件)に必ず置き換えてください。他店の表記をそのままコピーすると、実態と食い違い、かえって不備になります。
↩️トラブルの元「返品特約」の書き方
要点:もっともトラブルになりやすいのが返品特約です。通信販売にはクーリングオフ制度がありません。返品のルールは、事業者が表示した返品特約で決まります。表示がなければ、法律上の返品権が働きます。
表示しないと8日間返品可になる
返品特約を表示していない場合、購入者は商品到着後8日以内であれば、送料を自己負担して返品できます。「返品を受けたくない」「条件をつけたい」なら、その内容を明確に表示する必要があります。
書き方の例
記載例:「お客様都合による返品は、商品到着後◯日以内・未開封のものに限りお受けします(返送料はお客様負担)。不良品は当店負担で交換します。衛生商品・受注生産品は返品不可。」——可否・期限・条件・送料負担の4点を、はっきり書きます。
注意:「返品不可」とだけ書いても、不良品や表示と違う商品まで拒否できるわけではありません。事業者の落ち度による場合の対応は、別に明示しておくと安全です。
定期購入の解約:定期購入では、返品特約に加えて「いつでも解約できるか」「解約の連絡方法・期限」も明確にします。解約をわざと分かりにくくすると、詐欺的な定期購入勧誘として、別の規制の対象にもなります。
返送料の負担:お客様都合の返品では、返送料を購入者負担とするのが一般的です。ただし、その旨を表示していなければ、負担の所在でトラブルになります。「誰が送料を持つか」まで書き切ってください。

🏠事業者情報(氏名・住所・電話)の注意点
要点:事業者が誰かを明かすのは、通信販売の信頼の土台です。氏名・住所・電話番号は、実在し連絡がつくものを表示します。ここを曖昧にすると、それだけで不備になります。
- 1氏名・名称個人は本名を表示。屋号やハンドルネームのみは不可。法人は登記上の名称。
- 2住所現に事業を行う住所。バーチャルオフィス等を使う場合も、連絡・書類受領ができる実体が必要。
- 3電話番号実際につながる番号を表示。「メールのみ」は原則不可。受付時間も添える。
自宅住所を出したくない場合:個人事業でも、原則は住所・電話の表示が必要です。どうしても自宅を出せない事情があるなら、連絡が取れる代替手段の確保など、要件を満たす形を専門家と相談してください。「書かない」という選択は、不備につながります。
電話番号は表示が必要
近年の運用では、電話番号の表示がより厳しく求められています。連絡手段をメールだけにして電話番号を伏せると、不備と見なされやすくなります。実際につながる番号を用意し、受付時間を添えて表示してください。番号を持っていない場合は、取得を検討します。
🔁定期購入・追加費用など見落としやすい項目
要点:基本項目はそろっていても、定期購入や追加費用、有効期限の表示が抜けがちです。ここは近年、行政の指導が特に厳しい部分です。
定期購入の条件
「初回◯円」だけで、2回目以降の価格・総額・回数・期間・解約方法が抜けている。
対策:総額・継続回数・各回の金額・解約の手順を明記する。
価格以外の負担
送料・代引手数料・オプション料など、価格以外にかかる費用の記載がない。
対策:かかる費用の内容と金額(または条件)をすべて書く。
申込みの有効期限
「期間限定価格」に期限を設けているのに、その期限を表示していない。
対策:有効期限があるなら、その期限を明示する。
動作環境・提供条件
デジタル商品やソフトで、必要な動作環境・利用条件の記載がない。
対策:利用に必要な環境・条件を具体的に書く。
これらは、購入者が「思っていたのと違う」となりやすい項目です。特に定期購入は、初回価格だけを大きく見せて、総額や継続回数を小さくすると、行政指導の対象になります。金額の全体像が一目で分かるように書きます。
最終確認画面も対象:2022年の改正で、定期購入などは「注文の最終確認画面」で、総額・数量・引渡し時期・解約条件を明確に表示することが求められています。特商法表記ページだけでなく、申込み直前の画面も点検してください。(定期購入の規制は、姉妹記事で詳しく取り上げます)
📄表示を省略できる場合の考え方
要点:広告スペースが限られる媒体では、一部の項目を省略できる仕組みがあります。ただし、ネット通販では基本的に「全部書く」のが安全です。
省略が認められる条件
紙のカタログや限られた広告枠などでは、「請求があれば遅滞なく提供する」旨を表示し、実際に速やかに書面や電子メールで提供できるなら、一部の記載を省略できます。
ネット通販での実務:ウェブサイトはスペースの制約がほぼありません。だから、特商法表記ページに全項目を書くのが基本です。省略に頼るより、最初から漏れなく書く方が、結果的に手間もリスクも小さくなります。
モール出店と自社ECの違い
楽天・Amazon・メルカリなどのモールでは、プラットフォーム側の仕組みで一部の情報が補われる場合があります。それでも、事業者としての情報表示が求められることは多く、モールの規約と特商法の両方を確認する必要があります。自社ECサイトでは、すべて自分で表示する前提です。
⚠️やりがちな失敗と落とし穴
要点:「ページはある」のに不備、というのが典型です。テンプレのコピペや、カート初期設定のまま、が原因になりがちです。
つながらない電話番号
番号は書いてあるが、誰も出ない・使われていない。表示していないのと同じと見られます。
対策:実際に受電できる番号と受付時間にする。
他店のコピペ
他店の表記をコピーして、自社と合わない返品条件・事業者名のまま公開している。
対策:自社の実態に全項目を書き換える。
カートの初期設定のまま
BASE・Shopify・STORES等の入力欄を空欄や仮のまま公開している。
対策:管理画面の特商法設定を、公開前に全項目埋める。
屋号だけの表示
「◯◯ショップ」という屋号だけで、運営者の氏名・名称がない。
対策:正式な氏名・名称を必ず併記する。
共通するのは「公開前に見直していない」ことです。出店時に一度作ったまま、運用が変わっても放置、という状態が抜けを生みます。商品構成や配送、価格を変えたら、特商法表記も一緒に見直す習慣をつけます。

🧭迷ったときの点検手順
要点:迷ったら、次の3ステップで点検します。それでも不安が残る箇所だけ、第三者に見てもらうのが確実です。
1
必須項目がそろっているか
この記事のチェックリストと突き合わせ、抜けている行を洗い出します。まずは有無の確認です。
事業者名・電話・返品特約の3つは特に確認。
2
中身が実態と合っているか
書いてある電話番号・住所・返品条件が、実際の運用と一致しているかを確認します。
コピペのまま・つながらない番号に注意。
3
定期・追加費用の条件が明確か
定期購入や追加費用があるなら、総額・回数・解約方法まで書けているかを確認します。
「初回◯円」だけで終えていないか。
自社の特商法表記、抜けがないか無料で診断します
御社の特商法表記ページを拝見し、必須項目の抜け・返品特約の書き方・定期購入の表示などを、直し方とあわせてお伝えします。15分・オンライン・売り込みはしません。無料で表記チェックを予約する
❓よくある質問
Q. 個人でも住所・電話は書く必要がありますか?
はい。個人事業でも、原則として氏名・住所・電話番号の表示が必要です。屋号だけ、メールだけ、は不備になります。
Q. 「返品不可」と書けば返品を全部断れますか?
お客様都合の返品は断れます。ただし、不良品や表示と異なる商品など、事業者の落ち度による場合まで拒否できるわけではありません。
Q. メルカリやAmazonでも特商法表記は要りますか?
プラットフォームによって扱いが異なります。自社ECサイトでは全項目の表示が必要です。モールでも、事業者としての情報表示が求められる場合があります。
Q. BASEやShopifyの入力欄を埋めれば十分ですか?
入力欄は目安です。空欄や仮のまま公開しない、実態と一致させる、返品特約を明確にする、まで自分で確認してください。
Q. 表示に不備があると、すぐ罰せられますか?
多くはまず行政指導です。ただし、返品特約の不備は返品義務に直結し、悪質な場合は業務停止命令の対象にもなります。早めに整えるのが安全です。
Q. 特商法表記のほかに必要な表示はありますか?
個人情報を扱うならプライバシーポリシー、中古品を扱うなら古物商許可の表示などが別に必要です。特商法表記だけで、すべての表示義務が終わるわけではありません。
Q. 電話番号は固定電話でないとダメですか?
携帯番号でも、実際につながり連絡が取れるなら問題ありません。大切なのは、番号があること以上に、その番号で連絡が取れることです。
Q. 価格は「商品ページに記載」でまとめて良いですか?
販売価格は各商品ページに税込で表示し、特商法表記では「各商品ページに準ずる」とする方法が一般的です。送料や手数料などの条件は、特商法表記に明記します。
Q. 小さなショップでも守る必要がありますか?
はい。規模に関わらず、事業として通信販売を行うなら表示義務があります。副業や個人でも対象です。取扱いが少なくても、抜けがあれば同じように問題になります。
📝まとめ:今日やる順番
特商法表記を”整った状態”にする5ステップ
- チェックリストで、必須項目の抜けを洗い出す
- 事業者名・住所・電話を、実在し連絡がつく内容にする
- 返品特約を、可否・期限・条件・送料負担の4点で明記する
- 定期購入・追加費用・有効期限の条件を書き切る
- 書いた内容が実際の運用と一致しているか確認する。不安な所は第三者チェックへ
特商法表記は、一度きちんと整えれば、あとは商品や運用が変わったときに見直すだけです。まずは今の表記を、上から順に点検してみてください。
本コラムは特定商取引法に関する一般的な解説であり、法的助言・鑑定ではありません。記載内容は特定商取引法・関連ガイドライン等の公開情報に基づく参考情報で、行政の判断や個別事案の結論を保証するものではありません。法令・運用は改正される場合があります。個別の表示の最終的な適法性は、貴社の顧問弁護士等の専門家にご確認ください。


